はじめに

堅調な欧州株はさらに上値を追えるか

欧州では、ひとまず10月末の英国の「合意なき離脱」が回避されたものの、12月12日には英議会選挙が予定され、来年1月末の離脱期限に向けて、政治の不透明感が残る点は変わりません。その他の主要市場に比べて英国株の戻りが鈍いのは、ある意味で必然と言えるかもしれません。

一方で、大陸欧州の株価は好調に推移しています。独DAX指数は1万3,000ポイント台を回復し、最高値に迫る勢いをみせています。欧州中央銀行(ECB)が9月に大規模な金融緩和を打ち出す中、ドイツの7~9月期の実質GDP(国内総生産)は、2四半期連続のマイナス成長を免れ、市場参加者の間に楽観が広がった可能性があります。

今後、中国景気が持ち直してくれば、外需回復でドイツ経済にも明るさが戻るとの期待も上乗せされているようです。さらに、仮にそうならなかった場合でも財政出動という“奥の手”を期待する見方も根強くあります。

ただ、バリュエーション面では、フランス株も同様ですが、高水準にある予想PERからは、かなり前倒しで好材料を織り込んだ印象を受けます。実体経済の明確な回復の足取りを確認するまで、今後は株価上昇の余地が限定的となる可能性もあります。Brexit問題の行方と、その後の英国との関係を踏まえても、欧州株には慎重スタンスが求められそうです。

中国株のブレークスルーとなるのは?

貿易問題の相手国である米国の株価が最高値を更新する一方で、中国株の戻りは鈍いままです。香港での混乱も影響してか、上海総合株価指数は足元で横ばい、ないしは弱含みでの推移となっています。予想PERは依然として10倍台で推移しており、投資家心理の好転には至っていません。

10月の経済指標も軒並み事前の市場予想を下回り、底打ち・反転の兆しはいまだ確認できません。ただ、貿易協議の進展を考えるうえでは、景気の低迷は必ずしもマイナス要素だけとは言い切れません。なぜなら、そのことがかえって中国に自国景気の先行きに油断を与えず、合意締結に向けた取り組みを促すと期待されるためです。

また、追加的な景気対策への期待が高まることも、株式相場にはプラスに作用するとみられます。かねてから中国では2020年のGDPを2010年比で倍増させる目標が掲げられており、来年がその最終年となります。目標達成のためには、来年は6%台の成長が求められ、越えるべきハードルはそれなりに高いといえます。

2020年は、中国の「有言実行」の本気度が試される1年となりそうです。以上の2点を踏まえた時に、中国株のあるべき水準感は少なくとも“現状よりも上”と判断されます。香港情勢は予断を許さないものの、中国株がすでに最悪期を脱したという前提に立てば、極端に慎重なスタンスも、もはや不要と考えられます。

日本株で注目すべきポイント

2万円を大きく割り込んでスタートした日本株は、紆余曲折を経ながらも、昨秋の高値水準に近いところまで復活を遂げた形です。こうした順調な株価上昇によって、TOPIX(東証株価指数)ベースの予想PERは14倍近辺にあります。

この先、14倍を明確に超えていくには、米中合意プラスアルファの要素が必要になってくるとみられ、当面は高値圏でモミ合いとなる展開が予想されます。

例年、12月のホリデーシーズンに入ると、長期の休暇に入る海外投資家も増えます。そうなると、株式市場では国内投資家、特にボーナス支給で手元の流動性が増した個人の存在感が高まることが予想されます。

個人投資家の物色の特徴としては、配当利回りなどのバリュー系指標に着目した銘柄選別の傾向を指摘することができ、それが年末に向けての株式相場で「バリュー色」を強めることにつながると考えられます。

実際に過去10年間のデータをもとに、TOPIXバリュー株指数の月別パフォーマンスを計算してみると、12月はバリュー株がグロース株を大きくアウトパフォームする傾向にあることがわかります。バリューの代表業種として、金融・自動車・商社へのマネーフローが注目されます。

以上のことから、仮に12月の株価指数の上値が重くなる場面があったとしても、適切な銘柄選別によって勝機を見出すことは十分可能とみています。

<文:投資情報部 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷洋和>

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