はじめに

来週そして2020年の金融政策を予想

では2020年の金融市場を展望するうえで、現在のFRBの政策をどう考えれば良いでしょうか。

来週12月10〜11日に、今年最後の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。すでに前回10月末の声明文、あるいはジェローム・パウエル議長などFOMCメンバーの発言などを踏まえると、「現行の金融政策スタンスは適切である」との判断が多数派となっており、7月以降の利下げから政策金利据え置きに転じるとみられます。

また、FRBは7月以降、3会合連続の利下げに続き、10月から不足気味だった流動性供給を増やし、再びバランスシートを拡大する対応に転じました。これらの対応が、製造業の調整が続く中で、米国経済にどう影響するかを見定める局面となっています。

FRBの政策対応に対する市場の信認が、来週のFOMCにおいて維持されるかどうかがポイントになります。パウエル議長のコミュニケーションが、2018年にうまくいかなかった場面が散見されましたが、2019年には対応に落ち着きがみられており、来週のFOMCでは大きな波乱は起きないと筆者は予想しています。

2020年のFRBの政策については、製造業の調整が長引く中で、成長率とインフレの安定が続くため、政策金利の据え置きは続くと予想されます。先述したとおり、2019年半ばまで続いたバランスシート縮小政策は拡大方向に転じており、これらの政策が成長率を押し上げる方向に作用するでしょう。

この筆者の想定が正しければ、低金利が続くとの見通しが強まり、仮に米中通商協議が長期化しても2020年早々の米国経済は底入れするでしょう。同年には米国の大統領選挙が行われるため、米中協議の行方とともに、米国の政治情勢で市場心理が揺らぐ場面が増えるでしょうが、株式などリスク資産に対してFRBからの追い風はさらに強まると予想しています。

<文:シニアエコノミスト 村上尚己>

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