はじめに
商品開発にどう生かす?
会場の一角で若い女性の声を聞き取り、熱心にメモをとる男性がいました。ジーユーグローバル商品本部生産部グッズチームの熊井均さんです。
デザイナーや、調査・企画を担うMD(マーチャンダイザー)、生産担当などをまとめる立場の熊井さんは、マシュマロパンプスが「痛い」「はきにくい」という声が上がっていた時から細かい改善を重ね、170万足のヒット商品に育て上げました。
2,490円という低価格ながら徹底的に履き心地にこだわり、「安い靴は履きにくい」という定説を打ち破ったのです。2020年の春夏商品では、かかとのクッションを改良し脱げにくくしました。「カツカツ」というヒール特有の音も軽減しています。
長財布が入る大きさかを確認
熊井さんはバッグの検討会の様子を振り返り、「便利だろうと思って作った仕切りが、たくさんは不要という反応があったのは意外でした」と驚きます。一方で「仕切りが少なすぎると自立しないなど、バッグの形作りが難しいという課題もあります」と苦笑いします。
今後はデザイナーや工場と話し合いながら、消費者の意見もどう生かせるかを話し合う予定。「消費者の声を1つ1つプロが“料理”することで、良い製品が作り込めます」(熊井さん)。この日出た意見は、2020年秋冬向けの商品開発に生かします。
業界に吹く逆風にも強気の姿勢
現在、ジーユーの国内店舗は約400店舗。ユニクロに比べると半分の数ですが、柚木社長は「増やすことには優先順位を置いていない。実店舗とECを融合させたオムニチャネルを前提にする」と説明します。
一方、中国や韓国などで31店舗を展開している海外の店舗は「中国・広州では開店前に500人以上並ぶなど需要がある」とみて、増やす計画です。
2020春夏の事業戦略を発表する柚木治社長
「フォーエバー21」の日本撤退など、風向きが変わりつつあるファストファッション業界ですが、柚木社長は「価格、デザイン、着心地、すべてに満足する商品を作ることで、世の中から求められ続ける」と強気の姿勢を崩しません。
2020年には、加工工程で出る水の量を最大で99%削減したジーンズを投入したり、ショッピングバッグを有料化するなど、環境にも配慮した施策を進めます。ユニクロに続いて、世界的な認知度を高める計画です。