はじめに
ESG投資に注目する投資家が増えています。ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせた言葉であり、ESG投資とは環境問題への配慮や社会性、企業統治への取り組みに優れた企業に株式投資をするものです。
地球温暖化など環境への意識が社会的に高まっているのに加えて、不祥事や経営体制などの問題が発覚する企業は後を絶ちません。そうした中で、株式投資では企業の管理体制や社会貢献への意識を知り、社会的責任を意識した経営をする「良い企業」を選ぶ重要性が増しているといえるでしょう。
そこで今回は、環境・社会・企業統治のESGを考慮するESG投資について考えてみたいと思います。
財務の数字では見えない企業の価値を評価
通常の株式投資では、売上高や利益のような財務の数字を見て企業の株式に投資をします。これに対して、ESG投資では財務の数字だけでなく、環境問題への取り組みや、株主・顧客・従業員・地域社会などの利害関係者に対して、いかに企業が社会的責任を果たしているかという、財務の数字では見えない企業の価値を評価に加えて、株式投資を行います。
たとえば、環境については二酸化炭素の排出削減に対する取り組みや自然エネルギーの活用などの地球温暖化への対応、社会の分野では地域社会への貢献や女性社員の育成や登用、企業統治では法令順守の状況、社外取締役の設置、資本効率を重視した経営、情報開示の充実などが評価項目として挙げられます。
ESGへの対応に優れた企業は経営の持続的な成長が見込め、投資家にとっても投資パフォーマンスの向上につながると考えられていることもあって、世界のESG投資は増加しています。
ESG投資の調査を行うGSIA(世界持続的投資連合)によると、全世界でのESGの投資残高は2018年初で約31兆ドル(約3,400兆円)。2年前と比較して34%増加し、世界の運用資産の3割を占めました。
日本でも、国民の年金を運用するGPIF(年金積立管理運用独立行政法人)がESG投資を拡大したこともあって、国内でのESGの投資残高は2018年3月末までの2年間で4倍となる232兆円と急増しています。