なぜ仮説と逆の結果になったのか

ここで紙使用量について、今一度考えてみましょう。オフィスの紙使用を減らす努力は、印刷を減らすなどで対応可能です。そうではなく、たとえば工場などでの紙の使用についてはどうでしょうか。

工場で生産が増えると、その包装のための紙需要が増えます。つまり、売上げが増えれば、紙使用も増えてしまいます。

そのように考えると、たとえば「紙使用量を売上高で割った値」が3年前と比べて減らしたかを見たほうが良いとも思われます。ところが、紙使用量÷売上高を使ってみても、減らした企業のほうが増えた企業より株価パフォーマンスが悪い結果になりました。

オフィスでの紙使用は売上げともあまり関係ない面もあるために、紙消費量を売り上げで割らないほうが良い面もあるとみられます。なかなか、紙使用量を使った分析は難しいようです。

紙使用量と株価の盲点

実は、もっと単純に考えてみると、面白い傾向が見えてきました。紙使用量を「公表している」と「公表していない」で分けたものです。下表で結果を見ると、紙使用量を「公表している」企業はその1年後でも、3年後でも株価パフォーマンスが上回っています。

【東証1部上場企業の紙使用量を公表している企業としていない企業のその後の平均株式収益率】

公表していない 公表している
1年後 15.6% 16.2%
3年後 61.9% 62.6%

(注)2011年以降、8月末での東証1部企業で紙消費量を「公表している」「公表していない」で分類し、その翌月から1年間と3年間の株式収益率の平均をさらに時系列で直近まで平均 (出所)Bloombergのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

実は、紙使用量を公表している企業は東証1部のうち6%程度と、とても少ない状況です。特に紙の使用を削減することに関する法制があるわけでもなく、公表が義務づけられているものでもありません。ですから、紙使用量を公表すること自体、会社側が環境問題、コスト削減、そして業務効率化に関して意識を高めていることの表れとも考えられます。

数値自体は確かに分析することが難しい指標でも、公表していること“そのもの”が重要な指標である場合もあるようです。