はじめに

少数株主に不利な日本のTOB事情

TOBの手法の1つとして、MBO(経営陣による買収)というものがあります。マネジメント・バイアウトの略で、スクイーズアウトをする買収者がマネジメント、つまり現経営陣である場合を言います。

買収する経営陣にとって、買収価格は安ければ安いほど都合が良いわけで、その点で明らかに株主の利益と相反します。このため、部外者が買収する案件以上に厳格な手続きが求められます。

しかし、日本は法制度が少数株主側にとって圧倒的に不利にできています。プロの機関投資家が「価格が安すぎる」あるいは「手続きが不公正だ」と思っても、あえて無駄な抵抗はしません。

ところが、いわゆるアクティビスト(モノ言う株主)たちは違います。会社側にさまざまなプレッシャーをかけ、TOB価格の引き上げを狙います。ですから、アクティビストが参戦してくれると、抵抗の余地がなかった一般の少数株主にも恩恵が転がり込むわけです。

ミイラ取りがミイラになって泥沼化

ここで、本題に戻ります。今回、最初にユニゾにTOBを仕掛けたエイチ・アイ・エスは、経営陣との折り合いを付けることなく、いきなりTOBを開始しました。

一般に、TOBは経営陣の賛同を得られた場合を「友好的TOB」と呼び、成功率が高まると言われています。会社側が株主に対して応募を推奨してくれる効果は絶大なのです。これに対し、会社側が嫌がってるのにTOBを強行することを「敵対的TOB」と呼びます。

エイチ・アイ・エスのTOBは、まさに敵対的TOBでした。会社側は猛反発し、ホワイトナイト、つまりエイチ・アイ・エスの対抗馬としてフォートレスにTOBを開始してもらい、賛同を表明。応募も推奨しました。

もっとも、エイチ・アイ・エスのTOBは100%支配を狙ったのではなく、45%を保有することを目標にしたものでしたが、フォートレスのTOBは100%支配を狙ったものでした。TOB価格もエイチ・アイ・エスが3,100円だったのに対し、フォートレスは4,000円でしたので、エイチ・アイ・エスのTOBに応募する人はいませんでした。

この時点でエイチ・アイ・エスは買収を断念したわけですが、共通の敵を駆逐した直後から、今度はフォートレスとユニゾ経営陣が仲違いを始めました。フォートレスに買収された後の従業員の処遇が不安だと、ユニゾ経営陣が言い出したのです。このため、TOB中だったフォートレスへの応募推奨も撤回してしまいました。

その後、多くの買収希望者がユニゾにアプローチ。その中には、米国の大手投資ファンド、ブラック・ストーンの名もあります。フォートレス以外の買収希望者から5,000円、もしくはそれ以上の価格が提示され出した結果、市場価格は4,000円どころか5,000円を突破しています。

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