はじめに

従業員による買収に経営陣も賛同

フォートレスは当初のTOB価格から100円だけ引き上げた4,100円で、TOB期間を9回にわたって引き延ばしています。現時点での公開買付期限は1月8日です。市場価格が5,000円を超えているのに、4,100円のTOBに応募する人などいません。

そしてついに、従業員有志が買収に名乗りを上げました。TOB価格は5,100円、公開買付期限は2月4日です。従業員有志は全株を買い取って、上場廃止することを目標にしています。

従業員によるスクイーズアウトなので、MBOならぬEBO(エンプロイー・バイアウト)です。もっとも、従業員たちにTOBに必要なお金はありませんから、資金は米国系ファンド、ローン・スターに出してもらいます。

会社側はこの従業員によるTOBに賛同を表明し、応募も推奨。これまで交渉してきた他の買収希望者全員との交渉も打ち切りました。

市場は新たな買収提案者を待っている

それでは、これで一件落着するのでしょうか。株主たちが5,100円で応募してあげれば、従業員たちは1株当たり純資産が7,200円の価値がある会社を5,100円で買収できてしまいます。いくら経営陣が賛同しているからといって、みすみす他の買収提案者は指をくわえて見ているのでしょうか。

また、ユニゾの取引先でこの会社の株式を持っている株主は、TOBに応募して保有株がゼロになっても、ユニゾとの取引を続ける限り、同社との縁は切れません。一方、従業員有志は業務の実務には精通しているでしょうけれど、経営の経験はありません。

買収資金を出すローン・スターは「支配することを目的にしていない」と言っていますから、額面通りに受け取れば、ローン・スターが経営の実権を握るわけでもありません。経営の舵取りをするのが経営の未経験者で、どういう経営になるのかもわからないまま、はたして取引先株主は従業員によるスクイーズアウトを良しとするのでしょうか。

そういった不確定要素ゆえでしょう。株価は5,100円をわずかに超え、12月27日は5,170円で取引を終えています。

敵対的買収者であろうと、より高い買収価格は株主にとってウェルカムです。市場は5,100円よりも高い値段を提示する買収者の登場を待っている――。株価がそう言っていることは間違いありません。

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