はじめに
主要な金融商品の2019年相場について専門家に聞く短期集中連載。3回目は、史上最高値を更新し続ける「米国株」です。
米中貿易摩擦で揺れ動きながらも強い動きを見せた米国株の勢いは、2020年も続くのでしょうか。アメリカの株式市場に詳しいマネックス証券の岡元兵八郎チーフ・外国株コンサルタントに、2020年の米国株の行方と投資戦略について話を聞きました。
年末相場にもたらされた“クリスマスプレゼント”
――2019年は年末にかけてNYダウ平均など米国の主要な株価指数は大きく上昇し、市場最高値を更新する強さをみせました。米国株市場はどんな1年でしたか。
岡元さん: 前年末に大きな下落に見舞われてスタートした2019年の米国株マーケットは、世界経済の減速懸念や米中貿易戦争といったネガティブな要因を警戒するムードがあったものの、年末にかけて相場は一気に強気に転じました。
年末の上昇を後押ししたのは、12月に米国、カナダ、メキシコの間で、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わるUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)新協定で合意したことに続いて、米中間の貿易交渉が一部合意に達したと報じられたことです。
グローバライゼーションの象徴である米中間の貿易摩擦は、長く市場の重石になってきましたが、一部合意のニュースは市場に安堵感をもたらす“クリスマスプレゼント”となったといえるでしょう。FRB(連邦準備制度理事会)が利下げを続けてきたことや、企業業績にも大きな波乱がなく、底打ち感が意識されたこともプラスに働きました。
その一方で、ドナルド・トランプ大統領の一挙手一投足に振り回され続けた1年であったことも指摘しておかなくてはなりません。
米中貿易交渉では、3月にも合意に達しそうだとの報道がなされて市場に楽観ムードが広がりましたが、5月には一転してトランプ大統領がツイッターで追加関税の拡大を示唆。その後も突然のツイートや追加関税の応酬が繰り返され、トランプ大統領の発言のたびに市場が動揺してきました。
S&P500は年末に3500ポイントも視野
――米国株の強さは2020年も続くでしょうか。
私はそう考えています。まず、企業業績の改善が株式市場を大きく後押しするでしょう。2019年はいまひとつでしたが、これは2018年の企業業績が大規模減税で大きく改善したことの反動です。
4月に発表が始まる2020年第1四半期(1~3月期)決算からはこうしたイレギュラーな要素が消え、業績は大きくプラスに転換するでしょう。通期では2ケタ成長に回復するというのが、市場の一致した見方です。
景気の減速を懸念する声もありますが、実体経済は至って堅調です。何といってもGDP(国内総生産)の7割を占める個人消費が力強い。失業率は過去50年で最も低い水準にあり、2019年1月から10月までの平均時給も3%増加しています。
さらにFRBが3回にわたって実施した利下げにより、住宅ローンなど個人債務の金利負担も減少しています。消費者のマインドを示すミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)も、8月に底をつけて3ヵ月連続で上昇しました。
足元の株価上昇による資産効果で、消費者の財布はより緩んでくることも期待できます。こうした力強い個人消費は、引き続き2020年の株価を下支えするでしょう。S&P 500は2020年の半ばまでに3,300ポイントまで上昇し、年末には3,500ポイント程度まで上昇すると予想しています。