はじめに
詐欺や悪徳業者を摘発すると、たいがい騙しのマニュアルが出てきます。これは、詐欺のターゲットになった人を騙すための取扱説明書ともいえます。電話では「どういう言葉で騙すのか」などが書かれています。今、取説(トリセツ)を使った騙しが跋扈しており、注意が必要です。今回は、悪徳商法の手口についてみていきます。
「以前、パンフレットをお送りしました」
取扱説明書とは、新しい商品などを買った場合に、それをどう扱うのかを教える説明書きです。西野カナの歌ではありませんが、人に対する取説(トリセツ)も世の中には多くあります。
たとえば、電話の受発信に関する、お客様への応対マニュアルなどです。今の時代は、いかに効率的に業務をこなして、利益を得るかが問われており、どんなものにもマニュアルが存在します。詐欺を行う者たちも同様に、騙しの効率をあげるために、「電話ではどういう言葉遣いをするか」「相手のどんな状況を聞きながら話を進めるのか」など、様々なマニュアルを用意します。
ただし、社会性のある企業と詐欺師との大きな違いは、相手をどうみるかだと思います。企業であれば、話す相手を人格ある存在とみなして対応するのに対して、詐欺師たちは相手を人ではなく、金の成る木、あるいはモノとしてしか見ていません。それは、まさに商品に対する取扱説明書のようなものといえるでしょう。私たちが、こうしたトリセツ詐欺に遭わないためにも、騙しの中身を知っておくことは非常に大事になります。
昨年、高齢者の家に電話をかけて、仏像を高値で販売していた業者が、特定商取引法違反と詐欺の容疑で逮捕されました。だますための電話をかける「かけ子」の取説の内容はというと。
まず「以前 、パンフレットをお送りしました」と電話をかけます。高齢者宅には、いろんな郵送物が届いていますので、どこからの業者のものか、すぐに判断がつきません。そこで、つい「はい」と答えてしまいます。そして「以前ご案内した、健康長寿 ・無病息災を願って彫りあげた観音様ができましたので、明日、お届けしてよろしいですか? 」と畳みかけます。
もちろん、高齢者は注文をしていませんが、家には数多くの電話がかかってきているため、どこの業者か思いだせず、値段も聞かずに「はい」と答えてしまいがちです。それに「健康長寿」 「無病息災を願って彫りあげた」と手間暇かけたことを強調して、“ありがたい気持ち”にさせていることも大きいでしょう。この段階まで話を聞いてしまうような、断り切れない人が真っ先に騙されます。
しかし、「結構です」と拒否しても、業者は勝手に商品を送り付けます。それでも、多くの人は商品に同封されていた振り込み用紙で、40万円ものお金を払ってしまうのです。注文していない商品を送られてきても、契約はそもそも成立していないのだから、お金を払う必要はありません。それなのに、なぜ、払ってしまうのでしょうか?