はじめに

悪徳業者が使った「取説」の実例

おそらく多くの人も、なんで騙されるんだよ!と思うことでしょう。ここには、業者の側の巧みな戦術があります。実は、「かけ子」の取説には、さらに商品を送る前に次のことを聞くように指示されていました。

一つ目は「仏様に手を合わせているか 」です。「はい」と答えた人は、信心深い人であり、仏像を送られた時、それを拒否して送り返すのも忍びないと思ってしまいます。それに、送り返したらバチが当たるのではないかと思う人もいるかもしれません。

次に、「高額商品を買ったことがあるか」を尋ねます。 しかも、具体的な金額を出して確認します。 さらに以前に買った高額な商品は分割で払ったのか、一括だったのかも聞き出します。振り込み用紙を送り付けた際、相手に支払い能力があるかを確かめているのです。もし、商品を送ってもお金が払えなければ、郵送代が無駄になるだけですから、その辺りのことを考えてのことだと思います。

三つ目は「通帳を自分で管理しているか」を聞きます。というのも、騙しの対象は80歳、90歳の高齢者です。認知症の懸念のある高齢者の場合、成年後見人制度によって、本人にお金の管理をさせないようにすることがあります。

もし振り込み用紙を送って、家族に相談されたら、業者の側としてはマズイことになりますので、お金を自分の意思で自由に使えるかを確認しなければならないのです。こうしたいくつかの前段を経て商品を送りつけるので、高齢者はお金を払ってしまいます。

おそろしいほどに、よくできた騙しのトリセツです。ちなみに、仏像の価値は2万円ほどで、それを数十倍で売りつけていたのですから、ひどい話です。被害総額は4千万円以上といわれています。

昨年は、電話をかけてから、商品を送り付ける手口が横行しました。しかも、天皇の即位があり、平成から令和に代わりましたので、それに便乗して悪徳業者は「天皇陛下の退位を記念した「皇室のアルバムや写真集を買いませんか」と電話をかけてきました。消費者センターには、「通常なら12万円する写真集ですが、いまなら特別価格の9万円で買えます」と持ち掛けてきたり、「いらない」と断っても、最後には「買わないとは皇室を侮辱するのか」と恫喝されて怖くなってしまい、同意してしまったという相談もあります。

こうした事例を見ても、電話で皇室への篤い思いを持っていることを聞き出して、商品を送り付ける手法は、まさに先の仏像を送り付け商法と同じであり、何かしらの電話をかけるにあたっての取説があるのは十分に推測されます。

皆さんの周りにもいるかもしれない、相手の話を最後まで聞いて、断り切れずにお金払ってしまうような優しい高齢者の方にも、ぜひとも目を配って頂ければと思います。