はじめに
LNGシフトが理にかなっている理由
日本は現在、世界一のLNG輸入国として市場の拡大を牽引しています。財務省の貿易統計によると、2018年のわが国のLNG輸入量は8,290万トン。そのうち、豪州とマレーシア、カタール、ロシア、インドネシアの上位5ヵ国で全体の74.5%を占めています。
一方、同年の日本の原油輸入国の上位はサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェート、イランです。この5ヵ国で全体の83.9%をカバーしています。
両者を比べると、原油の輸入国は中東地域に集中しているのに対し、LNGの輸入国は世界各地に比較的分散しています。また、輸入上位5ヵ国に占める依存度も、LNGは原油に比べて低くなっています。
1970年代の2度の石油ショックで経験したように、日本は原油の供給が中東情勢の影響を受けやすい状況にあります。足元では、米国とイランの対立で原油の輸入に支障をきたす可能性があり、輸入先が世界各地に分散するLNGへシフトすることが、資源を安定的に確保するという観点からもメリットがあると思われます。
LNG関連の有望銘柄はどこか
LNG関連企業では、大手総合商社の三菱商事(証券コード:8058)に注目しています。同社は1969年に日本初のLNG輸入に関与して以来、LNGの生産・輸送・トレーディング・輸入代行業務に携わってきました。
海外では、同年にブルネイ政府などと共同出資でブルネイLNG社を設立し、天然ガスを液化するプラントの建設やLNG船着桟設備、付随するパイプラインなどのインフラ整備を開始。1972年にブルネイからわが国へLNGが初めて輸出され、日本のLNGの安定供給に貢献しています。
直近では、海運大手の日本郵船(9101)との合弁会社を通じて、米国のキャメロンLNGプロジェクトに参画。このプロジェクトはLNGの年間生産規模が1,200万トンで、そのうちの400万トンを長期契約で引き受け、日本の電力・ガス会社などに供給する予定です。すでに昨年5月から生産を開始しており、今後の業績への貢献が期待されます。
このプロジェクトには、総合商社大手の三井物産(8031)も参画しており、三菱商事と日本郵船の合弁会社と同様に、年間400万トンのLNGを長期契約で引き受けます。
このほか、世界各国でLNGプラントを設計・建設した豊富な実績を持つ、エンジニアリング大手の日揮ホールディングス(1963)、LNGを貯蔵するタンクを製造するトーヨーカネツ(6369)などにも注目しています。
<文:投資情報部 碓氷広和>