はじめに
トリセツの内容とは
一人でも多くの人を騙すためのトリセツにも余念がありません。
「自分のペースで話を続ける」「客の話を途中で切ること」それにより、相手にパニックや不安を引き起こさせることができるといったものもあります。もし被害者が「そんなサイトは利用していない」と支払いを拒否した場合には、次のような答え方をします。「第三者、例えば、お子様、ご友人などがお客様の端末を使った可能性はありませんか?」それでも、「身に覚えがない」といえば、次の言葉を発します。
「ウィルス感染や、ハッキングをされて、自動登録されてしまった可能性がありますね」
あらゆる回答を準備して、詐欺に臨んでいるのです。こうして不安を煽る一方で「もし調査をして、利用していないことがわかれば、返金します」と被害者を安心させる心理戦略も使っていました。おそらく、お金が戻るのならと、一端、お金を払おうかと思ってしまった人は多いのではないでしょうか。こうしたトリセツを用いて、2か月で2億円以上を騙し取っていたのです。
最近は「かけ子」だけでなく、家を訪れて現金やキャッシュカードを騙し取る「受け子」にも詳細なトリセツを用意しています。逮捕された「受け子」のスマートフォンには、被害者宅に行く際の服装への指示がありました。以前は、スーツ着用が必須でしたが、不似合いなスーツ姿で詐欺がバレて、逮捕される事例もあったためでしょう。今では服装のラインナップ写真を載せながら、ジャケットを羽織るようなカジュアルスタイルも推奨しています。
もちろん、家に着いてキャッシュカードを騙し取るときの手順もあります。金融関係者を装い「封入作業の件で伺いました」と高齢者宅を訪問し、封筒を差し出します。そして「この中にあなたのキャッシュカードと暗証番号を書いた紙を入れて、ご自身で保管してください」と言い、相手のカードを封筒に入れます。
そして、ノリをつけ、間髪入れずに、「封をするのに、割印が必要です。銀行印をもってきてください」と言うのです。家人がハンコを取りに行くために封筒から目を離した隙を見て、偽物のカードの入った封筒にすり替えます。