はじめに
「いいえ」と答えるだけでもダメ
警察の公開した犯人の手順書を要約すると次のようなものになります。
「警察官役が個人宅に、すでに「お金の被害(口座から勝手にお金が引き出される被害)が出ています。すぐに、キャッシュカードを止める手続きと、お金が戻ってくる手続をしましょう。被害者救済法に申請しましょう」という電話をかけています。そして同意をもらったお客のもとに実際に手続きにいくのが、今回お願いしている「R」のお仕事です」
「R」とは、キャッシュカードを警察や金融関係者になりすまして、カードを家に取りに行く「受け子」のことです。「手続きの方法は、封筒にキャッシュカードを入れて、数日間使わないでくださいねということです」そして、封筒に入れて自宅で保管しておく理由については「犯人側が引き出したのか、お客様が下したお金なのかの区別をつけるための処置ですから」と家人には説明済みとの記述もみられます。すべての事情を把握させたうえで、受け子を家に向かわせるのです。
こうして、騙し取ったカードでATMから犯人らは、金を引き出すわけです。もちろん、カードは1枚とは限らず、複数枚入れさせることもあります。それゆえに、多額の被害となってしまうのです。
こうしたトリセツを使うことの詐欺師側のメリットは、なんといってもどんな人が詐欺を行っても、高確率で騙しに成功できることがあるでしょう。昨日、騙しを始めた人でも、すぐにいっぱしの詐欺師になって犯罪を行えるのです。
詐欺師の質問に対して「はい」と答え続ければ、騙されてしまうのはいうまでもありませんが、「いいえ」とネガティブな答えをしても、お金を取れるように誘導するトリセツも準備されています。ゆえに、詐欺師との長話は禁物です。「何か、おかしいな」と疑問を思ったら、電話であればすぐに切る。そして、誰かに相談するなど、彼らが用意した想定問答の外に出る行動が必要になるのです。