はじめに
三越伊勢丹が百貨店業界の時価総額トップの座をJ.フロント リテイリングに明け渡しました。三越伊勢丹では成長戦略を描いてきた大西洋前社長の戦略を改め、杉江俊彦新社長の下で構造改革を進めることをアピールしています。
一方でトップに立ったJ.フロント リテイリングといえば、大阪の大丸と名古屋の松坂屋が持ち株会社化した、どちらかというと地味な存在の企業です。そこが三越伊勢丹や高島屋を抑えて百貨店業界のトップに立ったわけです。百貨店業界に何が起きているのでしょうか?
三越伊勢丹がトップから陥落
三越伊勢丹が時価総額トップの座から陥落し、J.フロント リテイリングが首位に躍り出ました。5月10日発表の三越伊勢丹の前年度業績は増収減益。2018年の3月期の予想では、そこからさらに33%減益で連結純利益が100億円に落ち込むそうです。
減益の理由はコスト削減のための構造改革にお金がかかることです。大西前社長の下では構造改革の対象外だった伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店という旗艦店でもリストラに徹底的に切り込むことを杉江新社長は表明しています。
そのため三越伊勢丹では毎年50人規模の早期退職者を募集するのですが、退職のための一時金の大幅な積み増しで莫大なコストが発生する。構造改革では、今後予想される地方の不採算店舗の閉鎖などでも大きなコストがかかりそうです。
構造改革が進めば採算はよくなるので、株価が上がると思うかもしれませんが、今回は逆です。杉江新社長が切り込もうとしている構造改革にはかなりのエネルギーと時間がかかりそうだということで、株価が下がったのです。
大丸・松坂屋がトップに
三越伊勢丹に代わって首位となったのがJ.フロント リテイリングです。百貨店業界では三越、伊勢丹、高島屋と比較して、その次のイメージがある大丸と松坂屋の持ち株会社がトップということで、百貨店のブランドイメージ的には意外に思われる方も多いかもしれません。
念のために申し上げておくと、松坂屋は名古屋ではダントツにブランドの高い百貨店で、名古屋の中心部に巨大な旗艦店を持っています。大丸も大阪の老舗百貨店で、心斎橋と梅田にそれぞれ旗艦店を展開してきました。
東京の人にとっては、長らく親しまれてきた東京駅の大丸も、銀座や上野の松坂屋もどちらかというと地方の百貨店が東京に進出したというイメージで、あまり高いブランドイメージはなかったかもしれません。
ところが近年、大丸と松坂屋のイメージは東京でも大きく変化しています。