はじめに

競争力を高める中国バイオ企業

2018年5月1日から、中国政府は抗がん剤の輸入関税を2%からゼロに引き下げました。この決定には、中国ではがん患者の費用負担の重さが社会問題化しているほか、中国地場系企業の研究開発力が向上していることも理由として挙げられます。

実際、中国で上市しているPD-1阻害剤は現時点で5種類ありますが、アメリカ企業の2つに対し、中国系企業はそれよりも多い3つという点からも、その研究開発力が見て取れます。

2018年7月に中国企業として最初にPD-1阻害剤を上市したのは、上海君実生物医薬(証券コード:1877.HK)の「Toripalimab(トリパリマブ)」です。その次の信達生物製薬(1801.HK)の「Sintilimab(シンティリマブ)」は、同年12月に上市しました。

最後の1社は、上海A株市場に上場している恒瑞医薬(600276.SS)の「Camrelizumab(カムレリズマブ)」です。こうした中国企業の視線は国内市場だけでなく、欧米市場進出も見据えています。

米中摩擦の影響は?

バイオ産業に関して、米中摩擦の影響はほぼないとみています。米中通商交渉の過程でバイオについての言及はほぼ見られないほか、米国の主要な製薬会社や医療機器メーカー、バイオベンチャーなどが中国市場から撤退・事業縮小する動きも、それほどみられません。

実際、製薬・バイオ企業や病院、研究機関に分析機器・試薬を提供する米サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(ティッカー:TMO)は、2019年8月に中国・江蘇省蘇州市に新たな生産拠点を建設すると発表(2024年稼働予定)。米中対立が懸念される中、同社は中国への進出を積極化しています。

その背景として、中国人の所得水準向上や長期的視野に立った政策的後押し、都市部で進む高齢化などから、医薬品への需要拡大期待などが挙げられます。また、中国では年間で約430万人が新たながん患者になっており、その規模は日本のおよそ4倍。がん免疫療法の伸びしろも大きいといえます。

こうした中国バイオ産業の発展は、米国の関連企業にとっても、新たなビジネスチャンスにつながるとみています。

<文:市場情報部 佐藤一樹>

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