はじめに

株式投資の経験を積み、財務分析やマクロ経済の分析もできるようになってきた個人投資家の人が、「僕たちが分析してる財務諸表は誰にでも見られる情報だし、こういう情報を分析しても既に織り込まれて意味がない気がしてきた」と話をされました。

たしかに、上場企業の財務情報は誰でも確認できます。それでは、どのような情報を得れば他者に先駆けてお宝銘柄を発見して、大きな利益を得られるのでしょうか? 今回は価値のある情報の探し方について学びましょう。


個人投資家とプロの間には情報格差がある?

株式投資で大きな利益を出す場合、一般的に言われているのは多くの人が気づいていない材料を早く見つけて、先駆けて投資をし、その後に多くの投資家が追いかけて投資をしてくる状況を作る必要があります。しかし、冒頭のように、既に開示されている情報を分析したところで、プロのアナリストも実力のある個人投資家もみんなが分析していることを考えれば、なかなか他者を出し抜くのは非常に難しいように感じられます。

このような話をしていると、「機関投資家と呼ばれるプロは個人投資家が得られないような情報を手に入れているから有利だ」と言う個人投資家もいますが、それは半分正解、半分間違いかな、と思います。筆者自身も運用会社で日本株のアナリストをしていたこともあるので、機関投資家ゆえの優位性を感じたことはあります。

業界用語でバイサイドと呼ばれる運用会社にいると、上場企業の社長や財務部長、経営企画部長が来社して直近の業績や将来見通しについて語ってくれて、質疑応答もできます。これを個人投資家がするのは難しいでしょう。

しかし、このミーティングの前に準備をする際は、開示されている情報を基に調査・分析を進めていきます。この時点では個人投資家と変わりはありません。その後、ミーティングの中で知らない情報が出てきたとしましょう。「やっぱりプロは有利じゃないか」と思うかもしれませんが、その情報がインサイダー情報にあたってしまうこともあります。情報がなくとも投資する予定だったとしても、聞いてしまった以上は投資できなくなってしまいます。

そういう意味では、情報格差の点においては、現代社会でそれほど個人投資家と機関投資家の間に差はないのかもしれません。むしろ、インサイダー絡みのことが起きにくい分、個人投資家の方が有利な面もあるともいえなくはないのです。

オルタナティブデータとは

では、インサイダー情報ではなく、かつ多くの人がまだ知らないような価値のある投資情報はどこにあるのでしょうか。この数年で一気に認知度を上げたのが、オルタナティブデータと呼ばれる投資情報です。オルタナティブとは日本語で「代替」という言葉で表現されることが多くあります。言葉の通り、企業の決算や国が発表している経済指標の代わりとして使える投資情報をオルタナティブデータと呼びます。

たとえば、スーパーやコンビニのレジで使われるPOSシステムによって収集されるデータや、衛星から撮影した画像データ、スマートフォンなどのGPSによる位置データなどがオルタナティブデータとして活用されています。

海外では既に一般的であり、米国のデータマイナー社の2018年調査では、欧米ではファンドなどの運用担当者の8割がオルタナティブデータを活用しているといいます。また、同社によれば欧米投資家の4割超がオルタナティブデータの取得のために1億円以上の投資をしているともいわれています。米調査団体・オルタナティブデータ・ドット・オーグによると、その流れを受けて、2018年時点で世界には400社強のオルタナティブデータ提供会社があり、この10年で社数は4倍も増えています。

身近なところでいうとクレジットカードのデータがオルタナティブデータとして活用でき、イメージしやすいかもしれません。クレジットカードを利用して買い物をすれば、当然クレジットカード会社には購買データが貯まっていきます。個人情報だけは削除したうえで、購買データを加工して分析すれば、どの産業でどれぐらいの購入金額が動いたかどうかなど、かなり細かくモニタリングすることができます。

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