はじめに
学費と塾費で「ダブルスクール状態」の可能性も
<モリの目>(森上展安)
タカの目さんの今回のお題は本コラムにふさわしくマネーに関する統計です。しかも家計を直撃する塾・予備校の費用。さてどうなっているか。
タカの目さんといえどもヨソ様の家計のヤリクリまで見通すことはできません。モリの目としてもタカの目さんのご家庭のフトコロ具合をオープンにせよ、とは勿論言えません。
そこでモリの目自身の実体験で申し上げると、わが子3人の教育費は様々でしたが、タカの目さんがあげている月1万と数千円の負担というのは微妙な数字です。
付属高にいった長男は幸い塾通いを好まずシンプルに学校だけ行きましたので、この数字にも及びません。というか全くコストはかかっていません。
一方、次男の方は同じ付属高でしたが、当時3割程度他大学に進学していた生徒の部類に入り、高2から週1で塾に行きました。高3ではほぼ毎日で帰宅は深夜、という塾でしたから、高3では170万円くらいかかっているはずです。しかし2年で割ると月10万程度に収まるでしょうか。
「モリの目」家の内情は付属校の極端な両極(系列大進学と他大学受験)のケースでしたが、中高一貫の進学校に行って国立難関大進学モデルでの塾の場合、首都圏の相場では月5万程度はかかります。
また、公立高校2年から塾・予備校というケースであれば月8万程度かかる勘定になるようです(モリの目調べ)。
私立中学高校にかかる保護者負担が80万円から100万円くらいでしょうから、塾・予備校代と負担額は同程度となり、文字通りダブルスクールの実態があるわけです。
「塾いらず」をモットーにした学校が流行る意外なワケ
これに対して「塾いらず」をモットーにしている進学校の場合、学校の費用に毛が生えたくらいの補習費用で済みますから、その金額がこのタカの目さんの統計金額に近いように思います。
つまり率直に言うと、この統計数字はまさに「平均」の数字であって必ずしも典型例ではないのです。
近頃の学校で流行し始めているのは、このような「塾いらず」型ではなく、「塾組み込み」型というべきタイプです。学校の中で外部の講師を手当てして生徒はアフタースクール、つまり課外で放課後に高校の教室を利用して外部講師の授業を受ける、というあり方です。
なぜ今これが流行し始めているかというと国の「働き方改革」の余波がきているからです。
東京都が中位の都立高校に今年度から某塾のアフタースクールを導入すると、以前に発表がありました。都立のこの例のように、学校の先生方が課外では授業をすると時間外労働となり、残業が固定化するため外部講師を入れ、進学実績をあげようという方策ですね。
私立はずっと以前からそうした方策を取り入れているところがありましたが、今回の「働き方改革」を受けて、これまで以上に外部講師に依頼する学校が増加しそうな雲行きです。
これを保護者負担の視点からみると、一般に塾・予備校に通うよりは当然お安くなります。なぜなら教室の賃貸料がかからない(不動産コストがゼロ)、広告費がかからない(宣伝コストがゼロ)という2大メリットがありますから学校としてもすすめ易いのです。
もちろん、塾・予備校にかかるコストより安く受験コストをあげる方策として通信による学習塾があげられます。これも自宅でやるタイプと塾・予備校の教室でやるタイプ、あるいは塾・予備校の教室にかえて学校の教室でやるタイプなどで費用は異なります。
塾・予備校に通う費用と余り変わらない価格帯が多いようです。というのも個別対応になるのでどうしてもコスト高になる事情があります。
今後変わる可能性も
このように塾・予備校費用のコストはかなり重い状態ですが、今後これが変わる要素も出てきています。それはすでにお示ししたような「働き方改革」による「塾組み込み型」の普及による保護者負担の軽減。
もう一つは、就学支援金の拡充(当面は東京都のみ年収910万円まで私立授業代平均額を支給方針)で、通常の年収層なら年40万相当の私立高校授業料負担が軽くなります。
あとは2024年からの高校大学接続改革による総合選抜型入試の拡大に伴う、いわゆる「大学受験」の消滅です。この3番目は、しかし一方でカリキュラムに「体験」を組むプログラムが用意されることが予想されます。
それを通常の学校授業料でカバーすることは難しく(例えば留学など)その費用は受益者負担の考え方で保護者が負担することになるでしょう。
結論を言えば学校教育費だけで済ますことはやはり難しいのではないでしょうか。ただ、寮制学校は通常より高額な分、アフタースクール費用込みと考えればよいのでしょうが、ある意味学校のみの費用とは言えます。