はじめに

居住者とのトラブルを起こす民泊も

居住者としてはいくつか気になることがあるのですが、やはり不安なのはセキュリティ。本来はオートロックで外部の人間は中に入れないマンションなのですが、おそらく郵便受けか何かで鍵を受け渡す仕組みになっているらしく、民泊関連で見知らぬ人がどんどんマンションの中に入ってくるのが現状です。

それも普通の観光客ならいいのですが、中には外国の軍人か地下勢力っぽい人にもよく遭遇します。身長180cmぐらいの筋肉質で腕に刺青が入った若い男たちが大声で私にはわからない言語で会話しながら、私と同じエレベーターに乗り合わせてくる場合にはいつも緊張してしまいます。

ゴミのルールを守らないのも困りものです。たぶん民泊を提供している人が教えない(ないしは教えても無駄)のだと思いますが、ピザやビール缶など大量の生ごみが、マンションの玄関スペースに朝、捨てられていくのは困りものです。定期的に来るマンションの管理人が「ごみはここに捨てないでください」と貼り紙をしているのですが、日本語で貼り紙をしても効果はありません。

民泊は貸し出す人にとってはいい収入源なのですが、近隣の居住者にとっては迷惑だというのも実情なのです。

ホテル業者への影響は二つ

とはいえ、政府が解禁を決めた以上、今よりもずっと民泊は増えていくことになるのでしょう。一般の居住者ではなく、ホテルや旅館業界にとっては民泊の増加はどのような影響を与えるのでしょうか?

経済学的には二つのことが起きると予測されます。

一つは宿泊料金の長期的な下落です。今起きていることを経済学的に説明すると、外国人旅行客の急増で、本来は宿泊料金が値上がりするはずのところを、そこに民泊という新たな供給業者が出現したことで供給が増え、宿泊料金が下がっている状態です。

ホテルの料金が上がろうとすると、それを見て「こんなに高く泊めることができるなら、うちを貸し出したほうが儲かる」と思った人たちが一斉に民泊を提供するようになる。そうすると、ホテルの料金はそれに押されて下がってしまう。そのようなことが市場で起きるわけです。

今回の規制緩和ではイギリスやオランダの規制を参考に、民泊は最長で180泊までという制限をかけることになるそうですが、民泊を提供したい個人はそれでも多数存在するため、一人あたりの制限があっても全体では民泊の供給量が増えて、結局ホテルの価格相場は下がってしまうでしょう。

最後にわりを食うことになるのは普通のサラリーマン

そうなると二つ目の現象が起きます。ホテルの新規建設数が減るのです。特にビジネスホテルのような安価な価格帯のホテル分野でそういったことがおきます。それはそうでしょう。これから先、無限に民泊の供給が出てくるかもしれない状況なのに、銀行から多額のお金を借りて、担保まで差し出して新規のビジネスホテルを建設するのは、商売として考えれば無謀です。

もちろん最高級クラスのホテルのように、民泊とは顧客層が違うホテルは話が別です。リッツカールトン、コンラッド、マリオット、ペニンシュラといったクラスのホテルは民泊の影響は比較的少なく、これまでと変わらず世界の富裕層を迎え入れることになります。

訪日客が増えれば、東京、京都、大阪といったエリアでは、高級ホテルを新たに建設する計画がこれまで同様に増加するでしょう。

結局のところ、影響を受けるのは普通のサラリーマンが出張で泊まるような5,000円~13,000円ぐらいの価格帯のホテルで、民泊が解禁されれば新規の開業は激減し、そうなると今以上に泊まることができるビジネスホテルを見つけにくくなると思います。

そのため結局は、普通のサラリーマンが出張で民泊に泊まるケースが増えることになるでしょう。

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