はじめに
東京オリンピック・パラリンピックの開催決定以降に計画されてきたインバウンド(外国人旅行客)の増加に向けたホテルやインフラの建設工事の竣工が迫っています。これらがゼネコン各社の収益の押し上げに寄与している一方、大型案件の竣工後に受注残高の低下に見舞われるゼネコンも散見されます。
さらに、そこに降ってわいた新型コロナウイルスの感染拡大。世界各国で感染を防止するための対策が急がれていますが、感染拡大が長期化する場合には7月に東京オリンピックの開催自体に影響が及ぶ可能性は否定できません。
新型コロナウイルスによる経済への影響も懸念されるうえ、いわゆる「五輪の崖」が現実になるおそれもあります。こうした中、2019年末に決定した大型経済対策に盛り込まれた公共投資に、オリンピック後の建設市場の牽引役として注目が高まると予想します。
予算が重点配分される2分野とは?
約26兆円が投じられる「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」のうち、公共投資の拡大につながる財政支出は5.8兆円にのぼります。
2018年末から始まった国土強靭化に向けた「3ヵ年緊急対策」において、2020年度の国土交通省予算も6.7兆円(前年度比1.14倍)に増額されており、土木工事の発注量の増加につながると考えられます。
今後、公共事業予算が重点的に配分されるのは、次の2つの分野だと考えられます。1つが河川や下水道の流下能力を増強するための水防災対策、もう1つが万一の際に避難や救援物資の輸送において重要な役割をもつ高速道路です。
水防災で活躍期待の3銘柄
水防災の必要性が高まっているのは、気候変動によって「スーパー台風」など台風が大型化していることと、日本周辺での偏西風の動きが弱まり、台風の移動スピードが低下するなど、台風が上陸した地域が暴風雨に晒される時間が長くなり、洪水などのリスクが高まってきたためです。
河川の氾濫を防ぐために、河底の浚渫や護岸の補強が必要になります。浚渫船の保有や、河川堤防の地盤改良工事を適用範囲にするサンドコンパクション工法を得意として、護岸ブロックの型枠賃貸事業も手掛けえる不動テトラ(証券コード:1813)が注目されます。
下水道や地下調節池を建設する際のニューマチックケーソン工法の老舗のOSJBホールディングス(5912)も、直近で受注残高が増加傾向で今後さらに受注の積み上がりが期待されます。
<写真:西村尚己/アフロスポーツ>