はじめに
20ドル台の原油価格は長期化するか
米国は国内シェールオイルの生産増を背景に、世界一の原油生産国に躍り出て、中東などからの原油の輸入依存度を低下させてきました。しかし今後、原油価格が30ドル台で推移するようなことがあれば、操業を停止するシェール企業が増加することになるでしょう。
こうした米シェール企業の撤回により世界の原油供給量が減少することで、需給がタイト化してくれば、原油価格は上昇に向かう見通しです。目先は、世界の新型コロナウイルスの感染者数の増加を背景とした世界景気減速懸念の高まりも加わり、WTI原油はしばらく底ばいで推移すると予想されます。
下値の目安は、米シェールオイルなど産油国の増産競争が続く中で中国の景気減速が鮮明化した2016年2月の26ドルとなるでしょう。とはいえ、当時と同様、30ドル割れの期間は長期化しないと想定しています。
新型コロナウイルスの流行を背景に、2月には中国が金融・財政政策の両面から景気を下支えする政策を相次いで発表しています。3月に入ってからは、米国をはじめとする先進国が国際協調的な金融政策を実施し、景気対策も各国で立て続けに発表されました。
こうした政策が今後効果を発揮するとの期待から世界景気の大幅な下振れ懸念が後退してくれば、リスク回避的に下落した原油価格は回復に向かうと予想されます。今後、新型コロナウイルスの流行が収束に向かえば、原油需要の回復観測が高まり、WTI原油は50ドル程度へ持ち直すでしょう。
<文:シニアストラテジスト 山田雪乃>