はじめに

退学処分になる学生も

「本学内並びに学外において、『ビットコインによる配当』の名目で勧誘が行われ、金銭トラブルや詐欺被害に巻き込まれかねない事案が発生しています」――。これは大阪青山大学(大阪府箕面市)による2019年4月の、公式Webサイトでの注意喚起です。同様の警鐘は、法政大学や学生活動支援機構など多くの大学や団体が公式に鳴らしています。山田さんの通う大学でも、他にも仮想通貨や株など様々な投資やマルチ系のビジネス勧誘が多発しているといい、大学当局や大手サークルの代表者が注意喚起を呼びかけているそうです。

山田さんは以前、勧誘してきた同じ大学の同級生について、「自分の周囲にも勧誘されたら困るので、対処をお願いします」と大学当局に報告したこともありました。彼はその後、退学処分に。「推測ですが、実際に他の学生にお金を払わせていたのではないか」と山田さんは語ります。

仮想通貨や株、不動産投資など、こうした怪しいビジネス勧誘の“題材”は様々で、インターネットが普及する以前から浮上していた社会問題です。ただ、金銭的に豊かでない大学生が狙われるのはなぜでしょうか。

情報商材のトラブルに詳しいあまた法律事務所(東京・文京)の担当者は「社会的不安を抱える高齢者だけでなく、新しいモノ好きだったり “意識高い系”だったりする若者も、こうした情報商材系のトラブルに引っかかりやすい」と分析しています。

前述の山田さんも、多くの“被害者”を学内で見てきた経験から「今の大学生は、親の承諾無しに自分で仮想通貨用の口座を作れたりなど、恐らく昔より投資を自分でやりやすくなっているのではないでしょうか。加えて、学校で金融教育が全く充実していない点も悪影響を及ぼしています」と話しています。大学生は、こうした怪しいビジネスが世間に蔓延していることに無知な「情報弱者」として、ターゲットにされていると言えそうです。

では、こうした怪しいビジネスの“当事者”になってしまった学生が巻き込まれた理由、そして本音とはどのようなものなのでしょうか。後編では、実際に投資系団体に参加し、商材やセミナーのため消費者金融を利用して大金を支払い、勧誘にも関わったことのある、とある大学生にインタビューします。

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