はじめに

初値がさえないのはコロナの影響?

さて、足元のIPO企業なのですが、初値の付き方にバラツキが出ています。2月のIPO企業数は3社で、全銘柄の初値が公開価格を上回り、平均初値騰落率は+74.7%でした。一方、3月は13日までで10社あり、平均初値騰落率は+2.0%にとどまっています。しかも公開価格に対し、初値が上回ったのは2社のみで、下回ったのは7社、同値が1社です。

IPO企業は一般的には投資家に馴染みは薄く、事前にアナリスト向けラージミーティングを開催して自社への理解を深めてもらおうとするケースが一般的です。そうした理由もあって、IPO企業の公開価格は本来の価値から、30%程度ディスカウントされているケースも珍しくありません。それを考慮すれば異常事態でしょう。

初値がさえない要因は、新型コロナウイルス・ショックであり、既存マーケットのボラティリティの大きさでしょう。投資家にとっては、IPO企業への投資にも及び腰になっていると推測されます。またIPOの承認を受けた企業も、この時期のIPOを避け始めています。3月にIPOを予定していたうちの3社が、自らの意思でIPOの承認取り消しとなっています。

初値の不振は、IPO企業への理解不足も一因かもしれません。不可抗力とはいいながら、IPO前のアナリスト向けラージミーティングを開催しない企業が多数を占めるようになりました。多人数が集まるイベントを避けるためです。IPO企業の投資には、目論見書の熟読が必須でしょう。しかしながらIPO企業のトップのプレゼンテーションを通じ、目論見書の無機質な表記には決して表れない、中小型成長企業の熱き思いに触れられることもあります。それこそがIPO企業投資の醍醐味ですが、現状は、その機会が奪われていると思います。

3月13日、日経平均株価は1,128円安、日経JASDAQ平均株価は172円安、東証マザーズ指数は34ポイント安でした。ほぼ全面安の商状の下、3月12日までにIPOした3月IPO企業7社は売り買い交錯を経て、2社の株価がプラスで引けています。弱い初値が予想される今後のIPO企業も含め、理解不足が解消するとともに、セカンダリー投資の妙味が高まるものと考えます。

<文:投資情報部 宇田川克己>

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