はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。
会社の上司が結婚を期にマンションを購入しました。上司は、「賃貸よりも住宅ローン返済額のほうが月々の支出が少ない」と言います。私は現在、駐車場代込で家賃9万円、1LDKの賃貸に結婚する予定の女性と住んでいます。増税や金利上昇などという言葉を耳にする機会もありますが、これまで年収が350万ほどの私には「住宅購入は早いかな?」と思っていました。住宅購入については、どのように考えればよいでしょうか?
私は北海道出身で大阪に就職しました。漠然とですが、退職後は北海道へ戻って、第2の人生を送りたいと考えています。子供は大阪で育てたいと思っています。
(20代後半 独身 男性)
深野: マイホームの購入で悩まれているようですが、質問者の方の将来設計を考慮すれば購入は控えたほうが賢明だと思います。
上司の方が言われた「賃貸よりも住宅ローン返済額のほうが月々の支出が少ない」ということですが、家賃と住宅ローン返済額だけを単純比較すれば、住宅ローン返済額が少なくなリますが、マイホームを購入した場合、月々の支払いは住宅ローンだけではないのです。
マイホーム購入した場合に必要になるお金
上司の方が購入したマンションの場合、住宅ローンの返済額のほか、修繕積立金、管理費、駐車場代(車や自転車など)などが、月々数万円はかかるはずです。しかも、修繕積立金は5年など一定期間ごとに金額がアップしていくケースがほとんどです。
加えて、固定資産税の支払いもありますから、トータルで考えれば賃貸よりも月々の支払いは多くなることが一般的なのです。
住宅ローンの返済が終われば、「家」という資産が残ると資産面を強調することもありますが、何十年という住宅ローンの返済が終わった後の物件にどれだけの価値があると言えるのでしょうか?
そして我が国の人口はすでに減少しています。将来的に多くの家余りが予想されるときに、資産云々を強調するのはいかがかと思われます。
家は所有するものから使用するものへ
なかには、うまくマイホームを売り抜ける人もいるのでしょうが、限られた話であり、一般の方が簡単にできることではありません。もはや家は、所有するものではなく使用するものへと変化しているのです。
また、退職後は北海道に戻って第2の人生を送りたいと考えられているのですから、現役時代は賃貸で過ごし、北海道へ戻られてから終の棲家を購入されてもよいと思います。
子供は大阪で育てたいと考えられていますが、子供に家を継がせると思わなければ、家を持つ必要は薄れるはずです。また子供が社会人になれば、家から出て自活することを忘れてはならないでしょう。
増税や金利上昇が気になられているようですが、増税で住宅市況が低迷すれば価格が下がるうえ、金利は上下動を繰り返しているので過度に心配する必要はないのです。
年齢、収入等を考慮すれば、子育てまで視野に入れた面積のマイホームを購入することは、かなりの背伸びと思われてなりません。
将来を見通せば、まとまった資金が必要なライフイベントもかなりあるはずです。
現在の貯蓄額がいくらかについては記載されていませんが、年齢から推測すると多額な資産ではないはずです。マイホームの購入で悩むよりも、まずは貯蓄、金融資産を増やすことに専念されるべきでしょう。