はじめに

ビジネスにも影響が

街からは子供の姿も消えました。帯同家族を日本に帰すよう要請した日系企業も多く見られ、邦人向け学校のみならず、すべての学舎の休園休校が徹底されるなか、コンドミニアムのプール、ジム、プレイグラウンドも全面閉鎖。体力のあり余る子をもつ子育て世代は「不要な外出を抑えるため、それにストレス発散のため、食事のデリバリーは欠かせません」(母親)とため息をつきます。タイに3000店舗以上ある日系飲食店は、デリバリーとテイクアウトに注力。突然の業態変更に戸惑いながらも、コロナ時代の“非接触”ビジネスに活路を見出します。

日本人に人気のデパートの閑散ぶり

タイ人、在住邦人ともに、日によって波はあるものの買いだめの動きも止まりません。日系スーパーの店員は「最大の売れ筋は日本製のカップ麺。このままでは入荷が間に合わないペースで売れています。米や飲料水、ティッシュは在庫も潤沢で、当面なくなることはないですね」と、少々やつれ顔。コロナショック以降の売上げを尋ねると「上がっています」としながらも、具体的な数字の言及は避けました。買い物客は「午前中に来ないと生鮮食品の棚がカラになってしまうので。肉や魚、ハムなどの加工食品は冷蔵庫に詰められるだけ買うつもりです」と長期戦に備える姿勢をのぞかせています。

いっぽうタイ人は、魚の缶詰と「ママー」ブランドのインスタント麺、麺に添える卵を中心にカゴいっぱいに詰め込む買い物客が目立ちます。それを見越したスーパーやコンビニも普段より缶詰め等を積み上げ、タイ人を強く意識した品揃えで迎え撃ちます。

魚の缶詰を並べたセブンイレブンのタイ人向け売れ筋コーナー

また、機を見るに敏な銀行や保険会社がこの機会を逃すまじ!とばかりに新型コロナ保険を販売し、多くの加入者を集めましたが、「わざとコロナに罹患して保険金をせしめる者が現れた」と出所不明の噂が出回ったり、フェイクニュース厳禁と釘をさす政府通達の直後に「外出禁止令は今日20時から」などのフェイク画像が出回るなど、混乱の中にもどこか滑稽さが漂うのは、大らかなタイの風土が関係しているのかもしれません。陰謀論も盛んです。

今後、日本も感染者の抑え込みが難しくなれば、ロックダウンを経てタイやほかの大都市と似た道筋をたどることになるでしょう。ただしデメリットばかりではないようです。ベネチアの封鎖で運河の水質改善が認められたように、バンコクの深刻な大気汚染と世界最悪と名高い渋滞はウソのように解消され、衛生レベルや環境に対する意識もこれまでにない勢いで上がっています。いま世界は歴史的な大転換期を迎えており、ウィルスと人類の生き残りを賭けた戦いの果てには、働き方も含めた生活スタイルも新たなフェーズに入るのだろう…と希望を抱かずにはいられないのです。

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