はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する内藤忍氏がお答えします。

住宅ローンの繰り上げ返済について質問です。住宅ローンの繰り上げ返済をする際、返済期間を短くする方法と返済額を減らす方法があり、今までは「返済期間を短くした方が総返済額がより減るので得である」と聞いていました。


ところがネットで調べてみると、「返済額を減らす方法でも減らした分を繰り上げ返済に回せば総返済額は変わらないため、毎月のキャッシュフローがよくなる返済額を減らす方を選択すべきである」という話がありました。これは本当なのでしょうか? また繰り上げ返済において、どちらがお得なのか考えをお聞かせください。
(30代後半 独身 男性)


内藤: 繰り上げ返済の際に、返済金額を減らすのか、それとも返済期間を短くするかという選択ですが、これは損得で考える問題ではありません。自分の資産管理をどのようにコントロールするかによって決めていくべきことだと思います。

繰り上げ返済の方法による違い

返済期間を短くすれば金利を支払っている時間が短くなるわけですから、当然、総支払金利は減ることになります。

一方で返済金額を少なくする方法は、キャッシュフローはよくなるものの返済期間は長いままですから、返済元本は同じでも総支払金額は大きくなります。

金利が同じであれば返済期間が短い方が金利負担は小さくなります。クレジットカードのリボ払いが支払回数を増やせば、その分総返済金額が大きくなってしまうのと同じことです。ですから、総返済額は同じであるというのは誤りです。

では、返済期間を短くするほうがよいかといえば、必ずしもそうとは言えません。

長い目で借り入れ期間を見ると…

固定金利で借りている場合、将来金利が上昇するのであれば、なるべく長く借りていた方が、安い金利で借りる状態を作ることができて有利です。

例えばローンの金利が1%なのに、銀行預金が2%になれば、借金をしたまま預金をしたほうがよいということになります。そのような事態も10年20年といった長期のローン借り入れ期間中にはあり得るのです。

また返済期間が長くても、毎月の返済金額が小さければ返済力が高くなりますから、新たな借り入れ余力が生まれます。住宅ローンを借りている人は通常、2つ目の不動産投資は難しいですが、返済金額が小さくなれば、余力を使ってワンルームなどの不動産を購入することができる可能性が出てきます。

ローンを借りるのは金利負担というデメリットがありますが、その金利以上に運用でリターンが稼げれば、レバレッジをかけて投資していることになり、必ずしもマイナスばかりではありません。

繰り上げ返済方法の正解は1つではなく、その人のお金との関わり方によって変わってくることを知っておきましょう。

「借金=悪」というのが日本人の典型的な思考ですが、その呪縛から離れることで新しい資産運用の可能性がみえてくるのです。

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