はじめに

最も注目している材料は原油価格

3月5〜6日に開催された「OPECプラス」会合では、ロシアが減産合意に反対し、物別れに終わったことで、サウジアラビアが一転して増産を発表し、ロシアも対抗措置で増産を発表しました。OPECプラスでの減産協議決裂と、サウジアラビアおよびロシアの増産発表を受けて、原油先物価格は大幅に下落しました。

OPECプラス会合が開かれた3月6日のオープンが46ドル/バレル台前半だったWTI原油先物価格は、その日のうちに41ドル/バレル台前半まで急落し、3月18日には20ドル/バレル台まで暴落することとなりました。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界の主要国の生産活動が軒並み大きく落ち込む中での原油需要激減見通しと供給過剰見通しは、ダブルで原油価格を暴落させる要因となりました。

原油価格の暴落は、産油国の歳入減少、財政赤字拡大につながり、財政赤字を補填するために政府系ファンドの運用資産取り崩しをせざるを得なくなるとの見通しが、世界の株価を圧迫することとなりました。

また、原油価格暴落は、トランプ政権の支持基盤であるとされる米シェールオイル業界の業績をも圧迫することになりました。4月1日に米シェールオイル開発大手ホワイティング・ペトロリアムが 、米連邦破産法11条(チャプター11、日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請し、ここからトランプ米大統領の原油価格への介入姿勢が強まり始めました。

米3月雇用統計が発表された4月3日は、いったんは決裂した減産協議再開に向けて、OPECプラス臨時会合への期待が強まった日でした。下記のように、東京朝方のトランプ大統領の発言を皮切りに、減産合意に向けた期待は膨らみましたが、ロシアが本気なのかどうかが筆者には分かりませんでした。しかも、トランプ大統領は、米国は減産するつもりはないと表明しており、ロシアが納得するのかどうかが疑問でした。

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ここまで間髪入れずに、協調減産合意へ向けても道筋が示されるだけで、市場の目はどんどん米雇用統計から離れていくことになり、4月6日のOPECプラス臨時会合での減産合意後の相場展開に目が向いてしまいました。「OPECプラス減産合意」=「リスクオン」という解釈をする向きが多かったと思われます。

すなわち、ドル高円安、株高、米金利上昇、原油先物価格上昇、というシナリオが描かれてしまったために、弱い米3月雇用統計はスルーされてしまったものと思っています。

米経済指標が弱くなることは、誰に言われなくても分かっていることです。市場は今、最悪シナリオ策定に躍起になっています。筆者はこの世界総悲観、「リスクオフ」論者大合唱の時期がドル買い円売り、米株式購入のタイミングではないかと考えています。

新型コロナウイルス感染拡大がいつ収束するかも気になりますが、4月に入ってからの各国の某薬品大量購入の動向を見ると、「収束はする」と筆者は予想します。

<文:チーフ為替ストラテジスト 今泉光雄>

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