はじめに

フランスではロックダウンから3週間が経ちました。フランスで初めての新型コロナウイルス感染者が確認されたのが1月24日。中国の武漢を経由した3人の中国人観光客からでした。1ヵ月後、フランス政府は感染症対策ステージ1を適用。

それ以降も、フランス政府は感染拡大を食い止めるべく、順にステージを上げながら対策を続けました。しかし感染は拡大し、3月17日正午、フランス政府は人々の外出を制限。ロックダウンが始まりました。

今、パリの人々の目に外出制限はどう映っているのでしょうか。


今自分ができることは休業

「外出制限が必要とされる深刻な事態なら、無理に期間を短くしようとせず、必要なだけ実行すべきです」。パリ市内に住むサラ・ルー・ジェルべさん(女性)は、そう言い切ります。ジェルべさんはパリ市内の庶民的なエリアで、持ち帰りランチを中心とした小さな飲食店を経営しています。

2月25日、フランス人初の新型コロナウイルスによる死亡者が出ました。ジェルべさんの店のそばにあるピティエ・サルペトリエール病院からでした。犠牲となったのは60歳の男性教員。同病院に勤める医者や看護師は、ジェルべさんの常連客でもあります。

「治療の現場がいかに厳しい状況にあるのかは、2月の時点で理解していました。常連の医療関係者たちから、新型コロナウイルスの話を常に聞かされていたからです。また、店の厨房を台湾出身の料理人に任せているのですが、彼も『これは大変なことになる』と繰り返していました」(ジェルべさん)

外出制限開始後、商店は透明なシートを使って感染拡大を防いでいる外出制限開始後、商店は透明なシートを使って感染拡大を防いでいる

3月12日20時、マクロン大統領はテレビ中継で全国一斉の学校休校を伝えました。同時にテレワークやそれに伴う補償についても宣言しました。

世界保健機関(WHO)のパンデミック宣言と同日です。3月14日19時、続いてフィリップ首相がレストランやカフェ、映画館などの休業を宣言。そして3月17日正午の外出制限へとつながっていきました。

「すでに危機感はあり、フランス政府の宣言と同時に店を閉めました。マクロン大統領の宣言から、すべての飲食店には一律1,500ユーロ(約18万円)が支給され、従業員には給与の8割にあたる一時失業給付金が適用されることが約束されました。そのため休業の決断をすぐできました。また第一線で新型ウイルスと戦っている医療関係者たちのためにも、飲食店経営者としてすべきことをしたかったということもあります」(ジェルべさん)

安全な距離を保ってパン屋に並ぶ買い物客安全な距離を保ってパン屋に並ぶ買い物客

テレワークで収入確保も長引くのは不安

パリ市観光局に勤めるエロディ・ペルタさん(女性)は、外出制限後はテレワークで仕事を続けているうちの一人です。フランスの多くの勤め人同様に、外出制限が出される前日の3月16日から、テレワークに入っています。

「毎日、大体朝9時頃にメールチェックを始めて、そのまま深夜近くまで仕事をしています。私は一人暮らしなので、家族の生活リズムは考慮せずに、自分の好きな時間に食事をしたり、就寝したりして、仕事の時間やペースは自分で調整します。仕事をする時間の長さというよりは、仕事の質で測っています」(ぺルタさん)

一方で、子供を持ち、家族と暮らしているぺルタさんの同僚たちは、テレワークであっても通常の勤務時間を守り、9時から18時まで仕事をしています。規則正しい生活を送るのは、学校が休校になり、自宅で勉強しなくてはならない子供たちの授業を、家庭で管理する必要があるからです。

仕事がテレワークに切り替わったとしても、給与は100%支払われています。そのため収入面での心配は今のところないといいます。

「外出制限で自宅にいるとはいえ、仕事はしているのですから当然です。ただ、これが長引くとどうなるのかは分かりません。有給を当てることになるかもしれませんし、その先は一時失業給付金が適用されるかもしれません」(ぺルタさん)

しかし、ぺルタさんにとって大きく変わったことが一つありました。人との直接的なコンタクトがなくなってしまったことです。いつもであれば、ベルタさんは終業後に友人と外出したり、クライアントと夕飯を共にしています。こんな風に一人で家にいる経験は初めてでした。

「孤独感を感じることが、一番辛いです。外出制限が必要であるということは、よく理解しています。途中で力を抜いてこれまでの努力を台無しにすることのないように、始めたからには徹底して行うべきだと思います。今はとにかく現状を切り抜けて、その先に待っている問題には、その時に当たるより他はありません」(ぺルタさん)

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