はじめに

企業情報データの分析で知られる東京商工リサーチは、全国社長の年齢調査を毎年公表しています。昨年公表された2018年の集計では、社長の平均年齢が「前年より0.28歳伸びて61.73歳だった。調査を開始した2009年以降、最高年齢を更新した」と記載されています

人生100年時代。高齢者も元気に活躍し続けられる社会という観点からは喜ばしいことかもしれません。しかしこのレポートでは気になるデータも示されています。“社長が高齢化している会社の業績が悪い”ということです。

この理由の一つとして社長が高齢化するほど経済環境の変化への対応が遅くなることがあります。実は、こうした“社長の高齢化と業績悪化”との関係は昔から言われる話です。今回、取り上げるのは、社長一人ではなく、もう少し対象を広げて”取締役の年齢“と株価の関係です。


「ダイバーシティ」の効果は?

いま一度、先に紹介した東京商工リサーチの分析を振り返ってみましょう。
分析結果では、30代以下の社長の会社では約6割は売り上げが伸びていますが、60代だと売り上げが伸びた企業は48%と5割を割り込んでいます。60代以上だと43%とさらに低下しています。

そして日本の会社全体の社長の平均年齢は毎年高まる傾向が続いてきました。足元にかけて長期的に企業業績の環境が厳しい理由の一つには、社長の年齢が高まっていることもあるでしょう。

ところで今回紹介する取締役の年齢に関しては、もう少し込み入った論点があります。
最近は会社などの組織で“ダイバーシティ”がキーワードになっています。年齢や性別、国籍などさまざまな立場の人がいる組織は、いろいろな観点からのアイデアが生まれて、イノベーションが起こり会社も発展するというものです。

取締役でも同じことが言えるでしょう。年齢が高い取締役には、失敗や成功などのたくさんの経験に培われた見方が期待されます。一方、若い取締役には慣習などにはとらわれない斬新な意見が求められます。

そう考えると、取締役の平均的な年齢は業績や将来の株価の行方は関係ないのかもしれません。むしろ、さまざまな年齢の取締役がいる方が良いとも思われます。

東証1部企業を対象に実際に分析

実際に取締役の平均年齢と株価パフォーマンスとの関係を調べてみました。
毎年1回、9月末時点で取得できる情報を使って、東証1部企業を対象に企業ごとの取締役の平均年齢を調べます。そして、平均年齢が低いほうから2割までの会社と、逆に平均年齢が高いほうから2割までの会社をそれぞれ抽出します。

東証1部企業は2,000社以上ありますので、それぞれ400社以上が選ばれます。そして、取締役の平均年齢が低い企業の平均株式パフォーマンスと高い企業のパフォーマンスを毎月比較して、その差を2020年1月までで平均してみました。

下表は、見やすいように年率ベースに直しています。つまり、年間を通じて「平均年齢が低い企業」と「平均年齢が高い企業」が平均的にどの程度リターンに差があるかを見ることができます。

【東証1部上場企業で取締役の平均年齢が低い企業と高い企業の株式パフォーマンス格差】

リターン差
取締役平均年齢 5.9%
最も高齢な取締役の年齢 2.3%

(注)取締役の平均年齢が「低いほう」から2割の企業と、「高いほう」から2割の企業の月次株式収益率の平均を年率換算する。そして「リターン差」は「低いほう」から「高いほう」を引いて算出。“最も高齢の取締役の年齢“は、取締役平均年齢の代わりに最も高齢の取締役の年齢を用いた場合の結果を示している
(出所)日本経済新聞社(日経cgs)のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

分析結果はリターンの差がプラスとなり、取締役の平均年齢が低いほうが高いほうより、年間で平均して5.9%、株式パフォーマンスが上回っていることがわかりました。

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