はじめに
ロングセラーのスナック菓子「カール」の販売を東日本で終了すると明治が発表しました。全国5か所の生産拠点のうち4か所での生産を終了し、松山工場のみに縮小したうえで西日本限定の商品となります。
認知度が高くファンも多い定番菓子が店頭から消えるショックにネットなどでは悲しみの声が続出。カールはなぜ消えるのか? 状況を整理してみましょう。
いつのまにかお荷物商品に?
カールの販売が終了する理由は「赤字」です。生産しても商品として利益が出ないのです。最盛期の1990年代には190億円の売り上げがあったカールも、現在は60億円と売上は3分の1以下に激減していました。
とはいえ、50年の歴史ある定番スナックが消えるというニュースの衝撃は小さくありません。ネット上では「大好きだったのに」「今後はどうすれば手に入るの?」と販売終了を嘆く声が多数聞かれました。いわゆる“カールショック”です。
関係者の話によると、カールはさまざまな意味で利益が出ない商品だったようです。50年前に日本初のスナック菓子としてカールが登場した際も、あまりの軽さに「空気を運んでいるようなもので利益が出ない」と物流業界からクレームが来たそうです。
店頭でも話は同じ。大きな袋で売り場の場所を取る割に価格は100円前後。確かに売り場効率という観点では利益が出ない商品です。
しかし、カールの歴史は短くはありません。利益が出ないのにロングセラーとなったのはどうしてでしょうか?
テレビコマーシャルが商品価値を牽引
小売業界からも、物流業界からも「利益が出ない……」と嘆きの声が聞こえた一方、カールは長年売れ続けてきました。
その最大の理由はテレビコマーシャルです。
「いいもんだぁなあぁ、故郷は」と歌うおらが村のカールおじさんのCMは高い知名度を誇り、結果、商品の売上にも貢献しました。
90年代のメディアミックスの時代にはカールおじさん自体がキャラ商品として売れるようになり、鉄板の定番へと育ちます。
ところが今、カールショックが起きて消費者ははじめて気づくのです。
「カールが大好きだったのは、我々の世代だけだったのか!」と――。
そう、40代、50代から圧倒的な認知と人気を得たカールですが、10代、20代の消費者にとっては、さほど知られていないスナック菓子なのです。
その理由のひとつはテレビの凋落。カールも2014年にテレビCMを終了。これが商品としての大きな転機だったといいます。
商品が不振なのでCMを止めたのか、CMを止めたから商品が不振になったのか……。にわとりと卵の関係ではありますが、CMを止めた段階ですでに、今回の判断となることは時間の問題だったのかもしれません。