はじめに
回復しない実体経済
それでは、このままFRBが金融緩和姿勢を続ける限り、株式市場は上昇を続けるのでしょうか?
金融市場には緩和マネーが流れ込んでいますが、この流れはなかなか実体経済につながりづらい状況です。いち早く新型コロナウイルスが感染拡大した中国では、3月以降徐々に企業活動が再開されていますが、欧米の需要国側で感染が広がっており、コロナウイルス感染拡大前の生産水準にはなかなか戻り切れていません。
また、欧米の中では比較的早期に感染拡大がみられたイタリアやニューヨークでも、強力な政策対応によって感染拡大に歯止めがかかりつつありますが、早期にロックダウンを全面的に解除するのは難しくなっています。
株式は投資した企業の業績が悪化した場合、配当金の引き下げや停止が行われますが、債券は発行企業が破綻しない限り、金利は支払い続けられます。
現在のFRBの政策では、前述したように投機的ではあるものの、比較的利回りが高い債券が買い入れ対象になっています。そのため、投資先としては一定のインカムゲインが約束され、破綻する可能性が高まったらFRBに売却できる債券の方が優位と考える投資家が増えることも考えられます。
これまでは、FRBの緩和策により債券・株式共に買われる展開が続いてきましたが、企業業績の悪化が鮮明になってきたタイミングでは、低格付けの債券は引き続き買われる一方で、株式は再び売られる可能性があるため、注意が必要と言えるでしょう。
<文:シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎>