はじめに

ブームを冷ややかに見る視線の先

「りんご飴ブームには関心がないのですが、大枠で見れば、リンゴを消費する場が増えるのは喜ばしいことだと思っています」

池田さんが目標の一つとしているのは、リンゴの売価の見直し。りんご飴には「小径小玉」と言われる玉のサイズが小さいものを使用しています。日本でこの小さいリンゴが生鮮食品として商品価値が低いのです。

「サイズにこだわらない海外と違い日本のリンゴの消費のされ方は特殊で、大きく傷がなくて赤い方が良いという基準なので、小玉には値段がつきません。たとえば木箱一つで7,000円と言われているものが、サイズが小さいだけで3,000円の値がついたりする。需要がないからです。それらは加工品やジュースにするか、袋詰めにして出荷されています」

農家さんたちにとっては、狙って小さいものを作っているのではなく、そうなってしまうものなので、大きいものも小さいものもかけている手間は一緒です。農家さんの願いはとにかく生産したりんごを食べてもらうことですから、消費される現場が増えた点は良かったと思います」

池田喬俊さん池田喬俊さん

過剰在庫を抱えず食品ロスをゼロに

リンゴは、農家が生産する品目の中でもとくに手間がかかるものだと言います。ポムダムールはそんな農家へのリスペクトを込め、食品ロスゼロを一貫しています。

「そのためには過剰在庫を抱えない、などといった日頃の努力が必要です。毎日1日の販売予想を立てて過剰に仕入れすぎない、といった工夫をしています。仕入れ過ぎてしまうと、使い切るまでに時間がかかって味も落ちてしまいます。毎日行うのはとても大変ですが、楽をしようとするからロスが出るんだと思います。

また、面倒くさがってつくり置きをしたりすると余りが出てしまうので、りんご飴はその日その日につくっています。その方が管理もしやすいんです」

新宿店では、リンゴのカクテルを出しています。これはつくり過ぎたりんご飴を再利用したり、搬送の途中で傷やくぼみができて使えないリンゴの救済のためのメニューでもあるのだとか。

「僕はりんご飴と出会って始まったストーリーというものがあって、それを伝えたいんです。りんご飴の見た目とか売り方の面白さとかで利益を上げるというのは、場所を変えているだけのお祭りと一緒です。僕は屋台で見たりんご飴に違和感を感じてこの店を始めたので、衝動的な商売のやり方に戻す必要はありません。一日でも長く、一個でも多くつくりたいですね」

そんな池田さんの3号店目となる新店舗が2月29日にオープンしました。店名は「十三月の林檎飴【アンディシンバー】」。現段階では店舗情報はほとんど出されていません。13月とは、現実にはない「誰も経験したことがない日々」を表しているのだとか。

※新型コロナウイルス感染拡大防止による緊急事態宣言の発令を受け、新宿本店と3号店は当面の間、臨時休業となっており(新宿本店は数量を限定しオンラインストアで販売)、2号店POMME L’IMINAL osakaは営業を継続しています。(2020年4月15日現在)

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