新型コロナウイルスの感染が世界各地に広がり、実体経済への影響が懸念される中、中国では半導体産業の育成に向けた新たな計画が静かに動き出しています。中国国内の報道によると、政府財政部が出資する国家IC産業投資ファンド(以下、国家半導体ファンド)の第2弾が資金調達を終え、今年3月下旬から投資の段階に入った模様です。

同ファンドの主な出資元は、政府財政部と各地方政府、中国煙草(タバコ)総公司、国有3大通信キャリア、その他民間資本となっており、半導体の設計から製造、テスト・パッケージまで自国内で完結するサプライチェーンの育成を目指して国内の半導体企業に対して出資を行っています。


大きな成果を生んだ国家半導体ファンド第1弾

2014年9月に設立された国家半導体ファンドの第1弾では総額1387億元(約2.1兆円)もの資金がさまざまな半導体企業に投資されています。

半導体ファウンドリ大手のSMIC(香港:918)や半導体パッケージ大手の江蘇長電科技(上海A:600584)、フラッシュメモリ大手の兆易創新(上海A:603986)、指紋認証IC大手のグッディクス・テクノロジー(上海A:603160)、LEDチップ大手の三安光電(上海A:600703)といった上場企業の成長を後押しする重要な役割を果たしました。

実際、中国政府による政策支援を背景に、昨年中国の半導体産業ではいくつか大きな進歩が見られました。たとえば、前述の半導体ファウンドリ大手のSMICは、昨年末に中国最先端の半導体製造技術である14ナノメートル・プロセスの量産に成功しました。

同社の技術はTSMCやサムスン電子など世界大手に比べて約5年遅れているものの、今回の量産開始によってスマートフォンや5G基地局に使われるICの大半を自給できるようになった意義は大きいと言えます。

また、非上場会社では、昨年NAND型フラッシュメモリ大手の長江ストレージとDRAM大手の合肥長鑫メモリが、それぞれ64層の3DフラッシュメモリとDDR4メモリの量産を開始するなど、現役の半導体として十分に通用するレベルまで技術的なキャッチアップを果たしています。

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米中貿易摩擦をきっかけに対米依存度低減は加速へ

2018年以降、米中貿易摩擦をきっかけに米国は中国のファーウェイやZTE(香港:763)、ハイクビジョン(深センA:002415)、その他未上場のAI関連企業に対して重要部品の禁輸や制裁措置を発動し、ハイテク分野における両国の覇権争いを浮き彫りにしました。

米国の調査会社であるICインサイツによると、2018年の中国のIC需要は1, 550億米ドルに上る一方、その国産化比率(外資系企業による国内生産分を除く)はわずか4.2%と極めて低く、中国企業が5GやAIの分野などの先端分野で成長を遂げるためには、半導体の対米依存度低減と国産化比率向上が喫緊の課題となっています。

国家半導体ファンド第1弾によって、中国政府はある程度自国の半導体産業を形作ることに成功しましたが、世界大手と対等に渡り合えるようになるためには研究開発と生産能力の増強を持続的に行っていく必要があります。

今回の国家半導体ファンド第2弾は、今まで投資してきた企業に対して持続的な支援を提供していくと同時に、サプライチェーンの中で特に手薄な半導体製造装置や素材への投資を強化する見通しです。

また、ファンド第2弾の資金調達額も2,042億元(約3.1兆円)と第1弾から約5割増額されており、今後投資が本格的に始まれば半導体業界のパワーバランスや合併買収、そして上場企業の株価に大きな影響を与えると予想されます。