はじめに

ビジネスの現場で起きたさまざまな悩み事に対して、リクルートマネジメントソリューションズのシニアコンサルタントである松木知徳さんがお答えするシリーズ。今回は、新入社員の教育担当を任されている20代男性のお悩みに回答します。

【相談者のお悩み】
4月も中旬になり、新入社員が職場に配属されたのですが、新型コロナウイルスの影響もあって全社的にテレワークをしているため、直接顔を合わせる機会がありません。

教育担当である私は、テレビ会議で話したり、チャットツールでこまめに状況確認をしたりして、新入社員が負担やストレスを感じないよう、自分なりにケアをしているつもりですが、このまましばらく対面できないままとなると、主に心理的側面で新入社員に大きな負担を与えてしまいそうな気がしています。このような環境下で良い関係性を築くためのコツは何かあるのでしょうか。(20代男性)

連日、新型コロナウイルスのニュースが報道されるたびに、不安と落胆の声がSNSにあふれています。4月8日の緊急事態宣言を受けて、自粛要請の範囲が広がり、我々の仕事や生活への影響はさらに強まっていく可能性があります。

感染防止のため、企業にはテレワークが推奨されていますが、商工会議所の調査によれば、実施している企業の割合は東京で26.0%(調査期間:3月13日~31日)、大阪で18.2%(調査期間:3月3日~10日に実施)となっており、取り組み始めた企業の中には、メンバーへの指導管理やコンディションの把握、チームづくりなどに不安を持つ人も多いのではないかと思います。

多くのビジネスパーソンがテレワークによる慣れない遠隔コミュニケーションに苦闘する中、「新入社員の受け入れに悩む」とさまざまな企業からご相談をいただきます。

本来であれば、上司や先輩社員からの指導を受け、同期との交流を深める時期にある新入社員たちの多くが在宅勤務を余儀なくされており、「人が密に集まって過ごすような空間」「不特定多数の人が接触するおそれ」を避けようと、入社式や集合研修を中止する対策をとる企業も多くあります。

経営学者で国際大学の伊丹敬之学長は、『場の論理とマネジメント』(東洋経済新報社)の中で、場を「人々の間の情報的相互作用と心理的相互作用のいれもの」と表現しています。新入社員に対して、対面であれば、指示や情報伝達だけではなく、反応を見ながら悩みを聞き、励ますこともできます。

一方、テレビ会議やチャットは情報共有にはとても便利ですが、個々の心理的側面への対応する場としては工夫が必要です。そこで今回は、行動科学を用いて、遠隔でも新入社員とのコミュニケーションを円滑にする手法をご紹介します。


「ソーシャルスタイル理論」が有効

1970年代にデイビッド・メリル博士らが提唱をしたソーシャルスタイル理論が、ビジネスに応用され、現在注目を浴びています。この理論は人の性格がある特徴的な行動に表れるというもので、行動傾向から適切なコミュニケーションの方法を把握するものです。

言動から「感情を表す/抑える」と「意見を主張する/聞く」の2つの観点から相手を4スタイルに分類し、相手に合わせた対応をすることで円滑なコミュニケーションをすることが可能です。

行動科学の分野で開発されたこの理論は、多くの企業においてスキル開発や組織の生産性向上のために応用されています。最近では、対面だけでなくコールセンターなど、非対面でのビジネスにも展開されています。

新入社員それぞれの特徴を意識できるようになると、コミュニケーションの精度は格段に高まり、互いのストレスが軽減し、仕事の生産性向上につながります。今回のお悩みを解決するのにも、「ソーシャルスタイル理論」は有効と考えられます。

4つスタイルに合わせた接し方

それでは、具体的にソーシャルスタイルの分類を見ていきましょう。

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アナリティカル(Analytical): 自分からあまり話をせず、詳細な情報を集めてからじっくりと仕事をするスタイル。いわゆる「マジメ系新入社員」という印象です。初対面の人に対してすぐに打ち解けるよりも、一定の距離を置きながら時間をかけて少しずつ理解をしていくスタイルです。

大人数での会議などにおいては、自分から積極的に発言するスタイルではないので、特に遠隔会議の時には発言しやすい環境を作ってあげることが必要です。事前にアジェンダや宿題を出して準備をする時間を作ることや、発言しやすいように投げかけをすると効果的です。

ドライビング(Driving): 反応が早く、いつも合理的な判断をするが感情を表に出さないスタイル。いわゆる「デキる系新入社員」という印象です。仕事には前のめりで、業務内容や自身への期待を早く理解して、仕事を前に進めたいと考えるスタイルです。

先輩、同期に関わらず思ったことをハッキリ主張するスタイルのため、特に遠隔会議の時には、キツイ口調で伝わり、場の空気を壊したり、軋轢を生んだりすることがあります。目的を伝えて、急ぎ結論を出すべき場とお互いの意見をフリー交換すべき場を分けることで対応がしやすくなります。

エミアブル(Amiable): いつも笑顔で相手の気持ちを大切にし、支援的な行動をとるスタイル。いわゆる「癒し系新入社員」という印象です。チームの中において、まずは自身が受け入れられるように周囲に気遣い、目の前の業務以上に人間関係を大事にするスタイルです。

「場の安心感」を大事にするタイプなので、何の連絡もないと不安になることがあります。テレワークが続くときにはお互いの「安否情報」や「コンディション」を共有し、グループチャットなどを通じて全員でコミュニケーションをする機会を持つと安心して働くことができます。

エクスプレッシブ(Expressive): 話好きでいつも大らか、気持ちが表情に出やすいスタイル。いわゆる「オモシロ系新入社員」という印象です。グループの中ではムードメーカーとして自ら周囲に声をかけ、瞬く間に組織に馴染んでいくスタイルです。

本来、話好きのため、リモートワークは非常にストレスが溜まります。そのため、定期的に面談や遠隔会議の場合など会話できる機会を提供すると喜びます。そして、面談や会議の冒頭には、感じていることや意気込みなどを共有する「チェックイン」を行うなど会話量を増やし、あいづちや反応を都度返していくと意欲がわいてきます。