はじめに
米国は雇用の急速悪化で株価底打ち
新型コロナウイルスの感染が世界最大となった米国ですが、株価の方は順調な回復を見せています。4月に入って、NYダウは一時2万4,000ドル台を回復し、3月の安値からは30%の上昇を遂げました。
今のところ米国株式市場からは、投資家の不安心理が後退しつつあるように見受けられますが、感染ピークアウト後の米経済の回復が十分でなければ、安定的な株高軌道に回帰するのも容易ではないでしょう。
先の標準シナリオ、および強気シナリオのもとでは、年後半に向けての株価回復を想定していますが、本格反転の時期が具体的にいつごろとなりそうなのか、以下で簡単な考察を加えてみたいと思います。
注目するのは米経済の歯車を回す原動力ともいえる雇用情勢です。外出規制や店舗閉鎖で経済封鎖状態にある米国は未曾有の雇用喪失に見舞われています。3月の非農業部門の雇用者数はおよそ70万人減少しました。減少幅はリーマンショック後の2009年3月以来の大きさでしたが、これはあくまでも氷山の一角にすぎないと考えられます。
3月第3週から4月第3週にかけての新規失業保険の申請件数は、4週間の合計で2,600万人を超えました。リーマンショック時の雇用者数の減少幅は870万人(2008年1月:1億3,840万人→2010年2月:1億2,970万人)だったので、わずか1ヵ月でその2倍以上の雇用の悪化が現実のものになったといえます。4月の雇用統計では3月の水準をはるかに上回る雇用の減少を覚悟しておくべきでしょう。
リーマンショック時の雇用は2008年1月をピークに、2010年2月のボトムまで約2年減少が続き、その後もとの水準に戻るまで6年以上かかりました。ただ、当時、株価が底を打ったのは2009年3月であり、雇用の減少が始まった2008年2月から数えておよそ1年後です。そのときに何が起きたかを振り返ると、月間で見た雇用の減少幅が最大を記録したポイントであることに気づきます。
雇用者数の減少が収まるのに先駆けて、株価の方は底打ちし、反転へと向かった当時の経験は重要な視点です。雇用の減少が止まった2年後や、失われた雇用が取り戻された6年後というタイミングは、一つの節目ではあるものの、株価の方向性を占うという点の重要性は低そうです。
足元の米国では、雇用の悪化が急速に進んでいますが、短期間のうちに最悪期を迎えるようなら、すでに反発に向かっている株価のボトムアウトは確固たるものになるかもしれません。米国の雇用情勢が相場の二番底の有無を判断するうえでは重要なカギを握りそうです。毎月の雇用統計はもちろんのこと、毎週の新規失業保険申請件数の推移にも注意を払いたいところです。
そして、思惑通り米雇用の悪化の底打ちが確認されれば、米国株は再び急落前の水準を目指して、着実に水準を切り上げていくことが期待できます。