はじめに

通常であれば飲食店や寿司店に卸される高品質なカツオのサクが、スーパーに並んでいたことをリポートした記事「コロナの影響でスーパーで買うカツオの刺身が美味すぎる。」 が、SNSで話題になっています。新型コロナ禍で外食需要が激減して消費が落ち込み、飲食店に卸されるようなカツオが安価でスーパーに流通していることを解説した内容です。

この記事をコンテンツ配信サービス「note」に投稿した鈴木允(すずきまこと)さんに、水産業の状況をどのように見ているのか、また今だからこそ買える魚はほかにもないのか、現在鈴木さんが代表をつとめる「日本サステナブルシーフード協会(β版)」の川合沙代子さんにも加わっていただき、話を聞きました。


カツオのクオリティの高さに衝撃

鈴木さんの投稿では、スーパーに並んでいるカツオの刺し身のなかに、例年の三角の形状とは異なり、今年は四角い断面のものがある理由を解説。通常はスーパーに流通しないような、元の魚体が大きく味の良いカツオが出回っているからだと、ひも解いています。

この鋭い洞察力にはうならされますが、鈴木さんは漁師見習い、築地の「セリ人」を経て、昨年6月までMSC(海洋管理協議会、Marine Stewardship Council)に所属していたという異色の経歴の持ち主。日本の水産の流通を知っている人物と分かれば、不思議ではありません。

鈴木さんは「このクオリティの魚がスーパーで普通に売られていることが、衝撃でした。大きなカツオほど脂が乗っておいしいので高値がつき、飲食店にいきます。逆に魚が小さければ単価は安く、サクも小さいのでトレイに載せやすくスーパーにいきやすい。同じ魚種でも飲食店向けか一般向けの量販店に卸されるのか、ランクによってすみ分けがありますから」と、このときの思いを語ります。

さらに飲食店が休業に追い込まれ、今まで高値で取引きされていた魚が売れなくなってしまい、一般消費者に売れるような安値で店頭に並んでいる状況について、新型コロナウイルスに影響を受けた水産業のダメージはきわめて深刻と指摘。

「豊洲まで送られて売られているものに関しては値段が付けられていてまだいいのですが、産地に話を聞くと、普段だったらキロ1,500円から2,000円で売られているような魚がキロ300円でも残っているという話まで聞こえてきます」(鈴木さん)

鈴木さんが4月27日に購入した、断面が三角の普通のかつおのサク。「四分一(しぶいち、1匹の魚を4つに割った1つ)のサクが234g。4倍にすると936gです。歩留まりが50%と仮定して、原魚は1.8㎏のカツオと推定できます」とのこと

鈴木さんはnoteに投稿した動機のひとつに、こんな状況だからこそ、産地を応援するために魚を買ってもらいたいという思いもあったと話します。

「普段から魚を食べる習慣のない方たちは、そのカツオが価値のあるものだとは気付かずにスルーしてしまうだろうと思い、いつもよりもおいしい魚が並んでいることを伝えて手に取ってもらおうと、微力ながらブログに書きました」(同)

noteに投稿した日からさらに状況は変わってきていると言います。魚の価格の下落、売れ行き不振で、船を出すことが燃油代のコストに見合わず、船の操業をやめている漁師もいるとか。

「こんな時期だからこそ、(魚の消費を増やして)漁師さんや産地を考える機会にしていただけるとうれしいですね」(同)