はじめに

「コロナ後」に元に戻らないもの

感染拡大さえ終息すればひとびとの生活や経済活動の多くは元に戻るでしょう。しかし、戻らないものもあります。あるいは、戻るとしても以前とは違う形になる。まず「密」なもの、狭い空間に多くのひとが集まるようなもの、たとえば音楽、演劇、スポーツ観戦などの各種ライブ公演など。スポーツジム、レストラン、バー、クラブ、などもそうでしょう。

これらは音楽やスポーツ、飲食が悪いわけではなく、危険なのは密に接すること、したがって重要なのは「距離」ということになります。アフター・コロナのキーワードは「距離(ディスタンス)」であり「遠隔(リモート)」ということになるでしょう。

いま多くのひとが在宅勤務を経験していると思います。やってみたら意外に仕事が回る、という声をよく聞きます。コロナを機に進んだリモートワークは不可逆的で、コロナが終息したあともこの流れは戻らないでしょう。

不可逆的というより、もっと進めなければなりません。世界との比較では日本のリモートワークの環境は劣っています。それでもビジネスの世界はまだましで、危機的なのは学校教育の現場です。日本経済新聞の記事によると「4月22日時点で小中の95%、高校の97%が休校していた日本。自宅学習は紙の教材が中心で、公立小中高校など約2万5千校の95%は同時双方向のオンライン指導ができていない」といいます。

いま日本の社会には何が足りず、その足りないことがいかに大きな社会・経済的な不利益を招くか身をもって経験しています。であれば、それを克服しようというモチベーションが生まれるのは当然でしょう。ピンチはチャンスに変えることができるのです。次回はリモートワークと労働生産性、そしてさらに企業価値の関係について述べたいと思います。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>

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