はじめに

汚いお金がキャッシュレスを推進する

日本はキャッシュレス後進国と呼ばれてきました。経済産業省が2018 年4月に発表した『キャッシュレス・ビジョン』によれば、2015 年時点の世界各国のキャッシュレス決済比率は、韓国が約9割とキャッシュレス国家としての存在感を確立しています。中国、カナダ、イギリスなどは4~6割となっていますが、日本は2割弱にとどまっています。

このような状況下で、「なぜ日本ではキャッシュレス決済が普及しないのか?」と聞かれることも多かったのですが、1つの仮説として「日本のお金(特に紙幣)が綺麗だからではないか」ということを答えていました。

時には「そんな理由があるか」とお叱りを受けることもありましたが、筆者はインドネシアに駐在していたり、ベトナムやカンボジアなどアジア各国に出張することも多かったため、新興国の紙幣がボロボロで汚れていた印象が強く、こういう国であればキャッシュレス決済を活用するインセンティブが働くと思っていました。

今回、新型コロナウイルスの感染拡大により、硬貨や紙幣の受け渡しをしたくないとの考えから、日本でもキャッシュレス決済を活用する人が増えたという報道があり、やはり、この仮説は間違っていなかったと思いました。現時点では硬貨や紙幣が感染経路となる証拠はないようですが、不特定多数の人が触れたものを避けたい気持ちは十分起こりうるでしょう。

キャッシュレスはデータを創り出す

このようにキャッシュレス決済が普及すると、私たち消費者にとってもよいことがあります。それは、全ての消費行動がデータとして残ることです。昔から自分の消費行動や貯金の残額を記録しながら管理する方法として家計簿をつける方法がありましたが、実際にやった人なら分かると思いますが、どうしても記載漏れなどが生じてしまいます。

しかし、既にいくつもの企業が家計簿アプリを提供しています。そのアプリとクレジットカードや銀行・証券口座を紐づければ、自身の資産を正確に管理できるようになります。決済手段が現金になると、結局は手動入力をしたり、レシートの写真を撮ったりする必要がありますが、決済もクレジットカードやQRコード決済だけにすれば、全ての消費行動がデータ化されます。

消費行動がデータ化されると、正確に情報が蓄積されていくだけではなく、自身の消費行動のクセを知ることができるようになります。ここでは割愛しますが、実際にビッグデータ解析を主業とするベンチャー企業やクレジットカード会社が発表しているクレジットカードデータを基に算出した消費統計を見てみると、コロナ禍における消費者の行動変化が確認できます。これは個人も同じで、データを見れば自分の消費行動のクセや変化を目で確認できるようになります。

ついつい使いすぎてしまっている項目や、家計を改善できる点などを分析して、より効率的な消費行動を心掛けましょう。