はじめに
2000年以前のマンションは「断熱なし」と考えたほうがいい
また、気密性の高いマンションにおいて、暑さや寒さへの対策として気になるのが断熱性能。「2000年以前に建てられたマンションは断熱性はあまり高くないと思ったほうがいい。さらに、1980年以前であれば全く断熱材が使われていない物件もある」と島原さん。なぜなら、その頃の建築において「断熱」という考え方がなかったから。「2000年の4月に住宅の性能を分かりやすく表示する『住宅性能表示制度』が施行され、大手建設会社を中心に断熱性能にも力を入れるようになった」と島原さんは説明します。
「ここ20年ほどはウレタンフォームを直接壁に吹き付ける施工が一般的。ウレタンフォームの使用量によって断熱性能も変わってくるので、築年数がさほど経っていない物件でも、念のため不動産販売会社に確認したほうがいいでしょう」(島原さん)
しかし、「結露の問題だけでいえば、新築マンションでも起こり得ます」と島原さん。その理由は窓枠。海外では樹脂製の窓枠が主流になっていますが、日本はアルミの窓枠を用いている物件がほとんどのため、冷えやすくて結露も起きやすいというのです。ただ、ここ最近は断熱や結露防止のために複層ガラスを使うマンションも増えています。中古物件を購入後、複層ガラスに取り替えることもできるのでしょうか。
「マンションの窓は共用部。そのため、自分の家の窓だけ性能のいいものに変えようと思っても規約上難しいでしょう。もちろん自分で内窓を入れることは出来ます」(島原さん)
島原さんの話を聞く限り、中古マンション選びは2000年以前とそれ以降とでは気をつけるべき点が変わるようです。部屋の性能面だけを考えると、築20年以上経っているマンションの購入は見送るべきでしょうか。
「そんなことはありません。実はここ数年で建てられたマンションの最高グレードの部屋よりも、築20年の中古マンションを自分でリノベーションしたほうが断熱性能を上げられます。現在の主流であるアルミの複層ガラスよりも、リノベして樹脂製の内窓を設置したほうが断熱性は高くなります。また、マンションの壁をはがして高性能の断熱材を入れることもできます。ただし、性能を上げるということはそれだけ費用がかかると思っていてください」
価格優先で物件を探している人にとって、修繕や断熱工事に予想外の費用がかかるのは避けたいところ。そこで、次回は中古マンション購入前にに検討したい「ホームインスペクション」について解説します。
島原 万丈
株式会社LIFULL/LIFULL HOME'S 総研所長1989年株式会社リクルート入社。2005年より リクルート住宅総研。2013年3月リクルートを退社、同年7月株式会社ネクスト(現LIFULL)でHOME'S総研(現LIFULL HOME'S総研)所長に就任。他に一般社団法人リノベーション協議会設立発起人、国交省「中古住宅・リフォームトータルプラン」検討委員など。