はじめに

やっかいな組織のマニュアル化

現代の詐欺では、悪徳商法以上に組織のマニュアル化が徹底されています。これが、詐欺被害がなくならない理由でもあります。

最近、逮捕された現金引き出し役の10代男性のスマートフォンに、詐欺の指示役から送られたマニュアルがありました。今、多く起きているのは、「あなたのカードからお金が不正に引き出されているので、カードを取り換えた方がよいとか」とか、新型コロナ絡みでは「特別定額給付金を受け取るのに、あなたのキャッシュカードは古いので振り込めない。新しいものに変えてください」といって、カードを詐取する形です。

その時、騙し取るカードが“もう使えない”と思わせるために、ハサミでカードに切りこみを入れることがあります。しかし、磁気の部分やICチップに傷をつけてしまっては、本当にカードは使えなくなります。そこで、図解式でキャッシュカードのどの部分に切り込みを入れるかまで指示していました。

一番、切り込みを入れてはいけないところは、やはり左横にあるICチップにかかる部分です。そこで「カード下にある銀行番号と店番の間からはハサミは入れてはならない」となっています。次に避けてほしい部分は「口座番号と、発行年月日の間」とされており、一番ハサミを入れてよいのは、「カードの右横の中央部分から」です。

ヒューマンエラーを見逃さない

また現金を引き出すために、駅なかを歩いていた10代の「出し子」も逮捕されていますが、その時、カバンからはみ出るように長ネギを入れ、他にカレーをつくる材料も入っていました。それは、カレーを作るために買い物をしていたと言い訳をして、職務質問を逃れるためのもでした。もちろん、これもマニュアルに指示されていることです。こうした職務質問を逃れようとする事例は他にもあり、逮捕が続いています。諺に、カモがネギを背負ってくる、というものがありますが、今の時代は、高額なお金が手に入るという、甘い言葉に誘われた受け子という「カモ」が長ネギを背負いながら、やってくる時代なのです。

ですが、10代の男性が長ネギをもって、ATM付近をうろうろと歩いていたら、逆に職務質問をしてくれといっているようなものです。しかし詐欺の実行役はマニュアル通りに動かなければなりません。

以前の詐欺のマニュアルでは、「受け子」はスーツを着ることが必須になっていました。しかし真夏にスーツを着てマスクをして歩いていために、逆に怪しまれて逮捕されたこともあります。マニュアル通りやろうとすれば、どこかでヒューマンエラーが出るものなのです。

詐欺の側の騙しのマニュアルの存在に、私たちが気づくことで被害は防げます。組織に対して、一個人の力だけではとても太刀打ちできません。ですが、組織ゆえのヒューマンエラーは必ず出てきすから、そのほころびをみつけて、いかに早く「怪しい」と思えるかが、騙されないためには、とても大事なことなのです。