はじめに

携帯3社はなぜ格安スマホを認めたのか?

さてこの格安スマホ、よくよく考えてみると大手通信会社にはあまりメリットがないように思えます。

自社で売れば月8,000円で売れる商品を、回線だけ卸売して、格安SIM事業者に1,500円で売らせているわけですから、おかしな話です。

食品の世界でも同じようなことがあります。豆腐からチョコレート菓子まで、さまざまな加工食品が自社ブランドで販売すれば高く売れるのにもかかわらず、大手スーパーのプライベートブランド商品を同じ工場で生産している食品メーカーがけっこうあります。中身はほとんど同じなのにPB商品は半額以下で売られています。

工場のラインに空きを出すよりも稼働させておいたほうがコストが少なくてすむのでメーカーは生産を請け負ってしまう、というのがその理由ですが、これと同じ話です。

つまりドコモからみると、ソフトバンクとauの販売力に押されて新規契約が減少してきたものの、回線の維持には多額のコストがかかります。それであれば、ほかの会社のブランドとして安く売ってもらって回線維持コストを負担してもらうほうがよい。

そして同時に、総務省の「スマホ料金を安くしろ」という圧力をかわすことができるのです。

このように格安スマホを始めたわけですが、売上が小さいうちは「コストの一部を負担してもらって助かっている」と言えましたが、その契約が1,000万を超えてくると、今度はドコモの売上自体を侵食し始めます。

では今後、携帯会社はどうすればいいのでしょうか?

キャリア3社の寡占がまた始まった

実は今まさに、その問題を解決するような現象が起きているのです。

空いている設備を稼働させる目的で始めた格安スマホ会社への回線貸しが本業を圧迫し始めてしまったらどうすればいいのか?

その解決策は、自ら格安スマホビジネスを始めてしまうことです。

NTTドコモの回線を使った格安スマホのなかで一番シェアが高いのは、実はNTTコミュニケーションズが販売するOCNです。ソフトバンク回線は子会社のワイモバイル、auでもやはり子会社のUQモバイルが、それぞれのトップシェアとなっています。

そして、調査機関によって数はぶれますが、これら大手キャリア系の格安SIM販売数を合計すると、全体の4~5割を占めるところまで大手キャリアのシェアが増大してきたのです。

格安スマホについてユーザーの一番の不満は「契約したのはいいけれど、どうやって使い始めればいいのかわからない」というものです。

私が契約を切り替えた例で説明すると、私はもともとSIMフリーのiPhoneを持っていて、そこに郵送でビッグローブのSIMが到着しました。

消費者として行うのは以下のような手順です。

1:封筒をあけ、SIMカードを台紙から割って取り出す
2:iPhoneの穴にクリップの端を押しこんで、SIMカードを入れるケースを取り出す
3:SIMカードを入れ替える
4:App storeからビッグローブのAPN設定をするアプリをダウンロードする
5:設定をインストールする

これがちゃんとできればスマホはその日から使えるのですが、もしステップのどこかでつまづいてしまったらコールセンターに連絡をして教えてもらわなければいけません。

ところがこのコールセンターがなかなかつながらない。街中に契約カウンターを用意する会社もありますが少数です。

これが大手3社の子会社であれば、コールセンターも充実していますし、ショップで説明を受けながらセッティングしてもらうこともできるわけです。

今、格安スマホ市場になだれ込んできているのは「携帯についてあまり知識がないユーザーたち」。そのため大手3社の寡占が再び始まりつつある、ということなのです。

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