はじめに

一流の投資家でも間違えて反省

市場でついている株価が間違っていないという、わかりやすい説明をしましょう。株価が実体経済と大きく乖離する水準まで買われていると考えるひとは、楽観的な投資家がバブル的に相場を買い上げているようなイメージを持っているのかもしれません。

しかし、当たり前ですが相場は「買い手」だけでは成り立ちません。市場でついている株価は市場の総意を反映したものです。もっと上がるから買いたいという強気や、この先下がるから売っておこうという弱気とが出合うから株価が成立するのです。

よく株価が騰がると「買いが多かったから」とか、反対に株価が下がると「売りが多かったから」という理由付けを目にすることがありますが、それも間違っています。市場で価格がつくのは売り買い同数で合致するからです。その瞬間瞬間の株価は強気も弱気もすべてが反映されています。

で、あれば「実体経済から(上方に)乖離した株価」も、当然、弱気派・慎重派の見方が反映されて成立している株価だということになります。それを「間違っている」と批判するのは相場に参加していないひと、つまりは、相場のなんたるかを実際には知らない「評論家」的な立場のひとでしょう。

ジョージ・ソロス氏の右腕として活躍した著名投資家のスタンリー・ドラッケンミラー氏は新型コロナがバブル崩壊につながると予想していたと明らかにしたうえで、自分の弱気見通しは間違っていたとメディアで反省の弁を述べました。

一流の投資家でも間違うのです。間違うのは投資家で市場は常に正しい。それをわかっているから間違いを素直に認めることができるのです。こういう謙虚な姿勢こそ一流投資家の証です。市場に関わる者として見習いたいものです。

前回「『アフターコロナ』で元に戻るもの、戻らないものを分けるキーワード』という記事の最後で、「次回はリモートワークと労働生産性、そしてさらに企業価値の関係について述べたいと思います」と書きました。

そのつもりでいたのですが、株式相場が急速に上昇基調を強めてきました。今回はやはりマーケットのことを書いた方がタイムリーだと思ったので、「リモートワークと労働生産性…」の話はまた次回にしたいと思います。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>

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