はじめに

自殺者は5月速報値までは減少

自殺の理由は健康問題、家庭問題、勤務問題、男女関係などさまざまですが、経済生活問題を理由とした自殺も多くあります。警察庁「自殺統計」と厚生労働省「人口動態統計」それぞれの自殺者数と完全失業率の年次データの相関係数を、データが存在する最長期間で算出すると、各々0.912(78年~19年)、0.934(53年~18年)と高いことがわかります。

警察庁の自殺者数は、日本における外国人も含む総人口が対象で、自殺死体認知時点で計上するのに対し、厚生労働省の自殺者数は、日本における日本人を対象とし、死亡時点で計上します。警察庁データの方が、公表が早いという特徴があります。

厚生労働省のデータによると、東京オリンピックの前年の63年から大阪万博開催年の70年までの8年間は1万4,000人台か1万5,000人台という歴史的な低水準で推移しました。第一次石油危機が発生し高度経済成長が終了した73年前後から自殺者数の増加基調が続き、77年に2万人台に乗りました。

78年以降を、警察庁の自殺者数の推移をみると、86年をピークに、バブル景気の山である91年まで減少基調で推移しました。しかし、バブル崩壊により、増加基調になり、金融危機の影響が出て98年に初めて3万人の大台に乗りました。

その後さらに増加基調が続き、03年には過去最悪の3万4,427人となりました。東日本大震災が発生した11年まで3万人台が続いたため、自殺者数は3万人台というのが当時の常識になってしまいました。その後、12年に15年ぶりに3万人割れとなり、19年まで10年から10年連続減少しました。

11年は年間では減少したものの、3月に東日本大震災が発生した翌月の4月から6月にかけてと8月の4ヵ月が前年同月比増加となりました。今年も、新型コロナウイルス感染拡大により増加を懸念する声も多くきかれましたが、意外にも4月は▲19.8%、5月も▲19.0%と、前年同月比は2ケタの減少率になりました。年初から5月速報値までの累計は7,799人、前年比▲11.6%の減少です。

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介