はじめに

次世代ディスプレイ技術としてアップルが注目

現在、最先端のディスプレイ技術として「有機EL」が高付加価値なテレビ、スマートフォンなどに採用されていますが、ミニLEDの登場によって有機ELの優位性が低下しそうです。

例えば、有機ELは確かにコントラスト比に優れていますが、同時にミニLEDに比べて劣化しやすい、最大輝度が低いといった弱点があります。また、製造コストに関しては、現段階においてミニLEDのほうが高いものの、今後、本格量産が始まれば有機ELよりも低コストになる見通しです。

このような優れた特性から、米アップルは次世代ディスプレイ技術としてミニLEDに注目。LEDチップ大手のエピスター(台湾:2448)と液晶パネル大手のAUオプトロニクス(台湾:2409)と共同で、100億台湾ドル(約362億円)をミニLEDの工場建設に投じる予定です。

この新工場は台湾の桃園市に建設され、来年にもiPadやiMac、MacBookなどのアップル製品にミニLEDを供給する可能性があります。

ミニLEDの普及で恩恵を受けるアジアのサプライヤーは?

今後ミニLEDの普及が進んだ場合、恩恵を受けるアジアのサプライヤーとしては、LEDチップメーカーのエピスター(台湾:2448)、三安光電(上海A:600703)、液晶ディスプレイメーカーのAUオプトロニクス(台湾:2409)、TCLテクノロジー・グループ(深センA:000100)などが挙げられます。

この中でLEDチップ世界最大手のエピスターは、近年LEDチップの価格下落を背景に業績が低迷しているものの、ミニLEDの普及を追い風に業績の回復が期待されています。台湾経済日報の報道によると、エピスターの売上高に占めるミニLEDの売上比率は今年5%、来年15%に達し、これに伴って同社の業績も再び成長軌道に戻って2021年から黒字転換する見通しです(2019年は37.5億台湾ドルの赤字)。

また、ミニLED分野での競争力を強化するために、エピスターは6月18日に同業のレクスター・エレクトロニクス(台湾:3698)と合併すると発表しました。同社の株式は10月頃に上場廃止になり、新設される共同持ち株会社の株式に置き換わる予定です。

LEDチップ世界2位の三安光電は、昨年120億元(約1,800億円)を投じて湖北に新工場を建設し、ミニLEDチップの生産能力増強に乗り出しました。同社はすでにサムスン電子の高機能テレビ向けにミニLEDのチップを供給していますが、今後他のメーカーのテレビやスマートフォン向けにもチップの販売が拡大する可能性があります。

そして、ディスプレイメーカーのAUオプトロニクスとTCLテクノロジー・グループは、それぞれアップル製品とテレビ向けのミニLEDディスプレイの開発に力を入れています。今のところ、両社の売上高の大半は液晶パネルであるため、その価格下落によって業績も低迷しているものの、来年以降ミニLED製品の市場投入に伴って業績の改善が期待されます。

このようにサプライヤー各社がミニLEDの生産拡大と普及に注力する中、ミニLEDをさらに小型化した「マイクロLED」という新技術の開発も進められています。近い将来有機ELを超える次世代ディスプレイ技術の実用化がますます加速しそうです。

<文:市場情報部 アジア情報課 王曦>

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