はじめに

事実と意見・フィクションを区別する考えを働かせる

これは本に限らず、新聞記事からSNS投稿まであらゆる文章を読むときの基本ともいえることですが、(物語など完全に創作された物語はともかくとして)本に書いてあることはすべて鵜呑みにしていいわけではありません。

調べれば他の本にも書かれている、あるいは正当なデータや根拠、客観的な観察結果に基づく「事実」もあれば、書き手の主張や妄想、立場に基づいて発せられた声明(ポジショントーク)などを中心とした「意見」が書かれていることもあります。

一番わかりやすいのが新聞です。起きた事件や政府発表といった報じる“事実”は1つでも、朝日新聞と産経新聞では論調が180度違うことも珍しくありません。

これは、数字やデータを交えながら客観的に書かれたようにみえる本や記事でも同じです。統計データをもとにして書かれていても「データをとるときの母集団の属性はどうだったのか」「解釈に恣意的な要素が入っていないか」などと頭を働かせなければ、事実と意見・フィクションの区別はつけられないからです。

たとえば昔からネット上に存在するジョークネタの一つに「インターネット上でアンケートを取ったところ、国民のインターネット利用率が100%ということがわかった」という話があります。

この話をフィクションとして流せるなら問題ないのですが、この数字を真に受けて「ならば、行政手続きはすべてオンラインに移行し、対面手続きはすべて廃止しても問題は生じない」と考えるのは、さすがにマズいとわかるでしょう。ネット上のアンケートなら、当然ネットを利用しなければ答えられないわけですから、100%になるのは当たり前だからです。

このように、読むときは文章や提示されたデータ・数字が「事実なのか、それとも意見やフィクションなのか。正しく取り扱われている情報なのか」などを考える必要があります。木山氏はそのような読むクセをつけるメリットについて、次のように語っています。

本には、著者の考え方が書かれた部分と、それを述べるための「著者ではない別の人物の考え方」が引用、あるいは紹介された部分もあるということです。これらを分けて読むクセをつけると、それなりの緊張感をもって本を読むことができます。

「自由で気ままに楽しむ読書」というと、漫然と読むだけのように思われるかもしれませんが、そうした「楽しむ読書」をするときから、事実と意見を自然と分けて読むことができるようになっていれば、情報や自分の思考を整理する力も身についているので、それを仕事や日常でも、自然に活かせるようになるでしょう。

(本書P.168より)


本記事では2つほど紹介しましたが、ほかにも思考力を高める読み方はあります。また最初に述べた通り、読む本の種類や目的はさまざまなので、こうした読み方をいつも行う必要はありません。ただ「内容から何かを得たい」というときはとても有効な方法ですので、ぜひ試してみてください。

「記憶力」と「思考力」を高める読書の技術 木山泰嗣 著

「記憶力」と「思考力」を高める読書の技術
弁護士や大学教授の仕事をこなしながら年間400冊以上を読破し、かつ10年で50冊以上の単著を執筆してきた超人気の法律家が習慣にしている、仕事にも学びにも効く読書法を紹介します。読解力、記憶力、思考力のすべてを鍛えられる独自の手法が満載です。

(この記事は日本実業出版社からの転載です)

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