はじめに

赤字の繰越は最大で10年

そして会社であれば、さらなる節税も可能になります。

中小法人の実効税率は現在約34%ですが、役員報酬を含む経費の計上により所得が発生しなければ法人税・事業税はかからず、支払う税金は住民税の均等割7万円のみとなります。この7万円の税金は赤字であっても支払わなければなりませんが、先ほどの例であれば7万円を差し引いても節税効果は70万円以上です。

また、中小法人に関しては交際費も800万円まで経費として認められます(役員本人が負担すべきものと認められる場合には役員給与として認定される可能性があります)。

青色申告法人であれば、赤字の場合には9年間の赤字の繰越(平成30年4月1日以降開始事業年度からは10年)が認められており、繰越期間内に所得が発生した場合には、過去の赤字と利益の相殺を行って税金の支払いを抑えることができます。

個人事業主の場合は、不動産の貸付から生じた赤字の繰越には制限もあり、赤字を繰り越せたとしてもその限度は3年間となります。

建物の取り壊しや修繕など多額の経費計上の可能性がある不動産業を営むのであれば、赤字を長期間にわたって繰り越せるということは心強いのではないでしょうか。
 

不動産の“争”続は会社で防げる!?

個人で不動産を所有している場合に相続が発生し、複数の相続人で遺産分割する際には、分筆や共有によって相続登記を行うこととなります。

ところが会社で不動産を保有すれば、個人が直接保有する相続財産は会社の株式等となるため、遺産分割の際に複数人で分割して相続することも容易となります。不動産の登記を変更する必要もなくなりますので、相続時の登記費用や登記手続も不要となります。

一方、会社が土地を直接保有する場合には、相続財産のうち貸付に使用している土地の200㎡までの評価額を50%減らして相続税の計算を行うことができる「小規模宅地の特例」が使えなくなるので、留意が必要です。

ただし、会社が保有する土地が値上がりした場合には、含み益にかかる法人税等の控除(現行37%)が可能となるため、不動産を保有する会社の株式の評価額を下げることができます。

なお、個人が土地のみを保有して同族会社に貸付を行い、その会社が不動産の賃貸事業を行う場合にも「小規模宅地の特例」の適用が可能となるため、土地は個人所有、家屋は会社所有とすることも一案として考えられます。

このように会社設立によって、将来の相続税対策とすることもできるのです。不動産投資を拡大し脱サラを考えている方には、会社を作ることも視野に入れていただきたいと思います。

銀行融資を受ける際にも、個人で物件購入する場合には、その方の年収や資産の状況によって制限がかかりますが、会社の場合は優良な物件を買い進めることで着実に利益を出していれば融資を得やすくなり、さらなる物件購入につながることもメリットといえるでしょう。

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