はじめに

「怒らないから正直に言いなさい」は逆効果

スマホやゲームの場合も、保護者が子どもへ「やめなさい」と言ったとき、保護者はその発した言葉どおりの意図でしか言っていないとしても、受け手である子どもは「お母さんから嫌われた」「お父さんは僕のことをダメな子だと思っているんだ」「僕なんか、このうちにいらない子なんだ」などというメッセージとして受け止めてしまうことが、往々にしてあるといいます。

このように拡大解釈ともいえるメッセージとして伝わってしまうことは、心理学で「過度の一般化」といい「認知の歪み」と捉えられていますが、親子のコミュニケーションに限らず、日常のなかでよく見受けられることです。

また言語によるメッセージと、非言語によるメッセージとが、異なっていたり乖離していたりする場合、受け手は混乱します。

片桐氏はこう話します。
「たとえば、親が子どもに対し『怒ってないから、正直に言ってみなさい』と、眉根を寄せ、厳しい視線で口元をきゅっと結んだ怒っている表情で言うと、どうなるでしょうか。子どもに与えられた選択肢は"言う"か"言わない"かのふたつですが、言っても言わなくても怒られることはわかっています。

このように言葉と見た目とで、相反するメッセージが伝わると、受け手である子どもは混乱してしまいます。どちらを選ぶこともできず、泣いてしまったり、その場から逃げ出してしまったりするほかなくなるでしょう」

また「イソップ物語の『北風と太陽』のように、相手を変えようと風を吹かせても、相手は頑なになるだけです。相手が心地よくなり行動に移せる状態になるまで、受容的にポカポカと照らしていくのです。依存症者への接しかたもおなじことがいえます。相手の存在を認め、心の傷やネガティブな感情が癒されてこそ、はじめて回復へと意識を向けるようになるのです」と語ります。

コロナの影響でゲーム依存症は増加した?

新型コロナウィルスとの向き合い方を模索する日々。子どものゲームやスマホへの依存の状況はどうなのでしょうか。

一般財団法人ワンネスグループへ寄せられる、子どもや未成年者に関する問い合わせの件数は、コロナ禍以前と休校期間中とでは、特に大きな変化はみられなかったといいます。しかし各地で学校再開がなされはじめた頃から「コロナの影響でゲームにハマり、学校に行けなくなった」「学校が始まってもゲームをやめられない」との相談が増加しているといいます。

休校中は、保護者が「いまはゲームの時間が長くなったとしてもしかたがない」という構えになっていたことで、かえって子どもはいつもより「ゲームをやめなさい」と口うるさく言われないぶん、ストレスが減少していたのではないか。それによって、自然と親子ともにゲームやスマホ利用に関する悩みから、多少なりとも開放され、子どもも「お母さんと普段できない話をしてみようかな」「宿題をやろうかな」という気持ちになることができていたのではないかといいます。

また不登校や引きこもりの子どもたちには、休校中、気持ちが和らいでいる様子が見受けられたといいます。筆者の接している事例においても同様の声が聞かれています。

休校や外出自粛となったことにより、不登校や引きこもりにある子どもたちが普段抱えている「自分だけが学校に行っていない。行けていない」「サボっている、怠けていると非難される」といった罪悪感や自責感情から、多少なりとも解放されることができていたのではないかと感じます。

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