はじめに
年間約12兆円のビジネス機会
社会的課題を有するセクターは、投資を呼び込むビジネス機会が大きいセクターとも考えられます。
世界約200社のCEOによる連合「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」の下部組織、「ビジネスと持続可能な開発委員会」は、SDGsに関連した4つの分野「都市と都会のモビリティ」、「健康および福祉」、「エネルギーおよび原材料」、「食料と農業」の下部構造に60のビジネス領域を見出し、市場機会の価値を報告しています。
そこでは、年間約12兆ドルの価値を生み、2030年までに最大3億8,000万人の新たな雇用を創出することができると試算されています。同時に、「都市と都会のモビリティ」はSDGs目標“住み続けられるまちづくりを”“人や国の不平等をなくそう”、「食料と農業」はSDGs目標“貧困をなくそう”“飢餓をゼロに”などの達成に貢献できます。
「ソサイエティ5.0」が医療を変える
では、ソサイエティ5.0は、情報社会(Society4.0)と何が違うのでしょうか。
情報社会では、個々人がインターネットを経由してデーターベースにそれぞれアクセスし情報を入手してきました。病院で個々の医者が検査結果の表示されたカルテを見て行う診断などが一例です。
この時、他の患者や医師の間で知識や情報は共有されにくく、多様に広がる分野が横断的に連携を図ることが難しいという問題がありました。また、地方に住む人が病気にかかった場合、近くの病院に専門医がおらず、早期に病名や状況を特定しにくいのが現状でした。
これに対し、ソサイエティ5.0では、デジタル画像データのやりとりで、遠隔での病理画像や放射線画像の診断が可能となります。手術支援ロボット分野では、今年1月から遠隔手術の具体的な検討も始まりました。
健康に暮らし続けるため、症状が悪くなる前に健康状態を確認したい、介護に頼り切らず自立した生活を送りたいという要望にも応えられるようになってきました。リアルタイムの生理計測データを収集し、医療現場の情報や感染情報など様々な情報を含むビックデータをAIで解析することで、日常的な自動健康診断が始まっています。
また、服薬の自己管理が困難な患者を対象に、薬にセンサーを組み込み患者の服薬状況を医療者が把握できる「デジタルメディスン」や、服薬時間になると患者に知らせる服薬支援機器なども、介護や認知症患者のサポート手段として実用化されています。