はじめに

日本初の功績に甘んじることのない「ハチ食品」

「1905年に日本で初めて国産カレー粉を発売したことで知られる老舗カレーメーカーさんです。欧風カレーをはじめとするジャパニーズカレーが得意で、味のクオリティとボリュームを両立させた『メガ盛りシリーズ』をヒットさせました」(スパイシー丸山さん)

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ハチ食品」は、1845年に現在の大阪市中央区瓦町で、薬種問屋「大和屋」として創業。スパイスやカレー粉、カレールー、レトルトカレーの製造を行っています。レトルトカレーの製造では、商品の特徴やレトルト殺菌条件に合ったカレー粉やスパイスの配合をしています。

「ハチ食品のレトルトカレーの強みは、スパイスの粉砕から焙煎、カレー粉の調合、ルーの製造ができ、そのカレー粉やカレールーを使用してレトルトカレーも一貫して製造できることです。またスパイスの粉砕や独自の調合ができることから、多種多様なカレー粉を組み合わせたカレールー、レトルトカレーの開発が可能です」(ハチ食品 事業推進室 野毛伴基さん 以下同)

同社のレトルトカレー商品の原点となるのが「カレー専門店のビーフカレー 中辛」。「当社が1990年に発売した初めてのレトルト商品で、2020年に30周年を迎えたロングセラー商品です」と、野毛さん。

現在は、「プレミアムタイムシリーズ」「アジアングルメ紀行シリーズ」「こってり濃厚シリーズ」など、それぞれ特色のあるシリーズを展開し、"辛さを極めたやみつきの旨さ”で大人気の名古屋名物「赤から」とのコラボ商品や、JTBパブリッシングが出版する旅行関連情報誌『るるぶ』とのコラボ商品、KADOKAWA発行の主婦向け生活情報雑誌『レタスクラブ』とのコラボ商品といった、他社との共同開発も行っています。

さらに国産初のカレー粉を製造販売してから100年目の節目の年となる、2005年に発売した「百年目のカレー 中辛」は、その後「中高価格帯商品の開発にさらに注力していく」きっかけとなりました。

そして、スパイシー丸山さんも着目していた「メガ盛りカレー」シリーズが2010年に登場。一般的なレトルトカレーの1.5倍のボリュームがあり、調合の異なる2種類のカレー粉でスパイシーさを出し、鶏肉と牛肉の旨み、ソテーオニオンの甘みを加えたソースを使用しています。現在、味のバリエーションは10種類に拡大して、同社の主力商品となっています。

見逃せないのが、元祖「蜂カレー粉」をリニューアルして使った「本格ビーフカレー 蜂カレー」。昭和後期に販売休止していた「蜂カレー粉」を2016年に復刻販売し、同時にレトルトの「本格ビーフカレー 蜂カレー」と、カレールーの「蜂カレー 本格カレールウ」を発売しています。

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「『蜂カレーシリーズ』は当社のフラッグシップ商品となるべく、原料となるスパイスの選定、調合、製法全てに最高峰を尽くして開発しました。オリジナル製法で製造をした芳醇な香りが特徴の蜂カレー粉とカレールーに、じっくりソテーしたタマネギ、ニンジンの甘みと、デミグラスソース、生クリーム、バターのコクを合わせたカレーソースに、旨味のある国産牛肉を加えて仕上げています」

国産初のカレー粉を開発販売した功績から、カレー研究家が注目するメーカーであるのは当然とも思えますが、野毛さんは「まだまだ『ハチ食品』の認知度は低いと認識しています」と、冷静に語ります。

今後の展開について「(全国の販売額は)レトルトがルーを逆転したと言われていますが、当社はカレーカンパニーとして、レトルトカレーだけでなくスパイスの素材や加工技術にさらにこだわったカレー粉やフレークタイプのルーの差別化製品の開発に取り組んでいきます。

フラッグシップ商品である『蜂カレーシリーズ』は全国に訴求できる商品として育てていきたいですね。

さらに、当社の強みであるお手頃価格でコストパフォーマンスの良い商品はもちろんのこと、中高価格帯商品や、機能性素材を使用した商品を開発し、より多くのお客様に口にしていただけるよう努めてまいります」と、コメントしています。

レトルトカレーのクオリティはもっと上がる

スパイシー丸山さんは、パッケージの表記が変わったことによるメリットについて、このように見解を語っています。

「パッケージから製造メーカーを知り、そこから同じメーカーが手掛けるレトルトを探すという新たな楽しみ方が生まれるかもしれません。また製造を委託する側も美味しいメーカーが容易にわかるようになったので、レベルの高い製造メーカーへの発注が増えるのではないかと予想しています。受注が少なくなったメーカーは技術向上につとめるはずなので、結果としてレトルトのクオリティーが上がっていくのではないかと思っています」

製造メーカーを手掛かりに選ぶ楽しみが増えたことに加えて、パッケージ表記が変わったことを機に、今後さらにおいしくなったレトルトカレーの登場も期待できそうです。

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