はじめに
老後に受け取る国民年金の支給開始年齢は原則65歳ですが、厚生年金については少し異なります。支給開始年齢の引き上げに伴い、現在60歳・男性であれば64歳からの支給です。
1961年4月2日以降生まれ(男性)の場合、65歳からの支給ですから、60歳からの5年間をどうしのぐかがアラフィフ世代の重要なテーマと言えます。
60歳定年以降の収入減少に不安を抱く人は多い
企業規模や業種にもよりますが、60歳定年を定めている企業割合は平均約80%となっています。これは、厚生労働省の就労条件総合調査(平成29年)によるものですが、同調査には65歳以上を定年としている企業割合は17.8%というデータもあります。
多くの企業が60歳定年制を採用していますが、65歳まで雇用を確保している企業の割合は99.8%にも上ります。つまり、65歳までの雇用環境は整っていると言えるのです。
しかし、ファイナンシャルプランナーとして活動をしている筆者の元には、60歳以降の働き方や収入に不安を抱えて相談に来られる方が多くいらっしゃいます。というのも、バブル世代と言われている今の50代は、右肩上がりの経済の中で住宅ローンの返済を70歳まで組んでいる方もいらっしゃいますし、60歳以降の収入が継続雇用制度で50%以上の減額となる現状も不安の一因になっていると感じています。
「退職金2,000万円以上」でも65歳までに使い切ってしまうことも
では、実際に60歳以降の生活費はどのくらいか平均データから見てみましょう。
総務省の家計調査(2018年)によると、世帯主が60歳~64歳の無職世帯(2人以上の世帯)の家計は、可処分所得15万7,169円に対して消費支出は27万2,713円です。
つまり毎月11万5,544円の赤字であり、金融資産などから穴埋めをしている状況です。現在の60代前半は厚生年金の支給や企業年金などを受け取っているケースが考えられますが、65歳までの5年間で約693万円の資産を切り崩していることが分かります。
1961年4月2日以降生まれ(男性)の場合には、公的年金の支給開始は65歳ですから、年金をあてにはできません。とすると5年間で約1,636万円の備えが必要と言えます。
なお、平均データの「住居費」は約1万5,000円であることを見ると、住宅ローンを利用している場合にはプラスオンして考える必要があります。たとえば年間150万円のローン返済がある場合は5年間で750万円の加算です。退職金や貯蓄を切り崩しながら65歳まで食いつなぐことは可能なのでしょうか?
経団連の調査によると、退職金の平均支給額は2,255.8万円です。これは大学卒業後に入社、60歳まで管理・事務・技術労働者(総合職)として働いた場合の算出になり勤続年数は38年間です。転職した場合は含まれず、会社の規模や業種、職種によっても異なりますから、これはあくまでも目安です。
実際に自分の退職金を確認しておきましょう。退職金2,255.8万円から前掲の家計調査での支出5年分1,636万円を差し引くと残りは619.8万円、もしも住宅ローン返済750万円あるとしたら退職金を使いきり、他の資産も切り崩すことになります。
つまり、65歳までに退職金がなくなってしまうのです。ですから、企業年金や民間の個人年金やその他金融資産の備えがどのくらいあるかを具体的に見積もっておく必要があります。