はじめに
雇用延長で5割以上減の収入、押さえておきたい働くメリット
65歳前に退職金が枯渇するのは不安な気持ちを増大させることと思います。多くの会社では65歳までの雇用環境が整っているとお話ししましたが、雇用延長に躊躇する方は筆者のご相談者の中にもいらっしゃいます。
国税庁の民間給与実態統計調査 (平成30年)によると60歳~64歳男性の平均年収は537万円で55歳~59歳と比べ約22%減となっています。企業規模や業種によってかなり幅がありますが、ご相談者様のなかには7割減で年収250万円といった場合、「働くモチベーションが下がる」といったお声も耳にします。そんな時に、働き続きるメリットとしてお伝えするのが以下の3点です。
・高年齢雇用継続給付金をもらえる
再雇用後の賃金が60歳到達時と比べて75%未満になった時に受け取ることができます。たとえば、3割の250万円(月額20万8,000円)のケースでは3万1,200円、年間37万4,400円になります。生まれた月により受給額は異なりますが65歳になるまで受け取ることができます。
・学生時代の未納だった国民年金保険料分の穴埋めができる
今の50代が大学生だった頃は国民年金の加入義務はありませんでした。そのため老齢基礎年金の受給額が満額に比べて約6万円程度少なくなっているケースが散見されます。その場合、ざっくりいうと厚生年金に加入することで国民年金の足りていない分を穴埋めすることができるのです。
・老後の厚生年金が増える
60歳以降も厚生年金に加入し続けることで老齢厚生年金の受給額を増やすことができます。たとえば65歳までの5年間を年収250万円で働いた場合、約6万8750円プラスオンされることになります。65歳から90歳まで25年間受け取るとしたら累計で171万8,750円です。どのくらい年金が増えるかの目安は、60歳以降の(年収×0.55%×勤続年数)で計算することができます。
このようなメリットについてお伝えすると、ご相談者様の多くは国民年金の穴埋めできる年数を目標に継続雇用で働いてみよう、などと目標を持つことで今後の働き方や生き方が明確になったと口にされます。収入が減る事実に変わりはありませんが、一義的にではなく社会保障を含めて俯瞰することの重要性についても考えてみてはいかがでしょうか。